ファンベースマーケティングとは?重視される理由と成功ポイントを知る
新規顧客を獲得するには膨大なコストが掛かりますし、その後の店舗定着率まで考えると効率的なマーケティングを実現するのは難しいです。そこで現在では、既存顧客をファンとして重要視する「ファンベースマーケティング」を実行するケースが増加しています。
ファンベースマーケティングを実現すると、顧客がリピーター、ファンになってくれるだけでなく、よい口コミが自然に増加するメリットまで得られるケースも多いです。より多くの企業がファンベースマーケティングを実践しようと、さまざまな取り組みを行っています。
これからの時代、ますますファンマーケティングの重要性が高まってくるでしょう。メリットの多いファンベースマーケティングですが、注意点を知っておかないと顧客が返って離脱してしまうリスクがあるので注意が必要です。
この記事では、ファンベースマーケティングの概要・メリットや注意点などをご紹介します。
目次
ファンベースマーケティングとは?
ファンベースマーケティングとは、自店舗に関してロイヤリティの高い優良顧客等をファンと位置付けて、施策を打っていくマーケティング手法です。
現代ではマーケティング手法や技術の進化によって、1人1人に合わせた販促が可能となりました。それに合わせてセグメント設定を行い、ファンとして認識できる層へ重点的にマーケティングを実行する事例も増えています。
ファンベースマーケティングでは既存のロイヤリティの高い顧客をターゲットに施策を実行していくので、従来の新規顧客へ重点を置くマーケティングとは大きく異なります。
リピーターとの違いは?
ファンとリピーターは、よく混同されがちな言葉です。厳密に説明を行うと、この2つは微妙に異なります。
まずファンはロイヤリティが高いので、スイッチングコストが大きくなります。
スイッチングコストとは商品・サービスを別のブランドへ変更する際の労力を表すもので、ロイヤリティが高いと簡単には自社ブランドから離脱しないため安定的な集客が可能です。
対してリピーターの場合は商品・サービスのリピート率は高いものの、ロイヤリティが高いとは限りません。そのため、代替品やサービスが登場した場合ブランドから離脱するリスクは高いです。
ファン=リピーターと捉えるケースもありますが、両者の細かい違いを理解しておくとマーケティングがよりスムーズになるでしょう。
ファンベースマーケティングでは、離脱リスクの低い顧客を中心に施策を実行していくのがポイントです。
ファンベースマーケティングが重視される理由
ファンベースマーケティングが重視されるのは、次のような理由があるからです。
売上安定がより重要視されてきている
新規顧客獲得よりも既存顧客獲得のほうが負担が少ないという考えは、実は昔からあります。
代表的な事例として、「パレートの法則」が挙げられます。この法則は「上位20%の既存顧客が、全体売上の80%を作り出す」というものです。厳密に説明すると意味が少々異なるのですが、とにかく「既存顧客が自店舗の売上の多くを占めている」ということを覚えておくとよいでしょう。
ファンベースマーケティングは既存顧客の中でもとりわけ優良な顧客を中心にマーケティングを行います。その点を考えると、パレートの法則から見ても効率的で理に適ったマーケティング手法だと言ってよいでしょう。
ファンベースマーケティングによって、売上は安定します。
現在では新規顧客自体の母数が低下しており、今までのように新規獲得で売上を伸ばすのが難しくなってきました。そこでファンベースマーケティングで顧客を逃さないようにするほうが、適切なマーケティング手法となりつつあるのです。
情報過多によって新規獲得が難しくなっている
現代は情報過多になってきており、ユーザーが余計と思うほどにメディアや広告といった情報とのタッチポイントが増加し、自然に情報が入ってきます。
仮に自社の情報がユーザーへ行きついたとしても、それはユーザーのPCやスマートフォンに一瞬表示されただけに過ぎないかもしれません。またきちんと情報が確認されたとしても、競合の情報などで忘却されて認知が広まらない可能性まであるでしょう。
たとえばSNSで一度バズって認知度が上がったように見えても、長期間の認知拡大にはつながらずマーケティングが失敗するケースもあります。認知に気を取られ過ぎているとこういった顧客獲得の失敗リスクが増えてしまうので注意しましょう。
ファンベースマーケティングが重視されるのも、情報過多で既存顧客へ情報を提供したほうが効率的になる側面が増えてきたからです。
UGCの獲得・活用が重要になっている
UGCとは、口コミに代表される顧客発信のコンテンツの総称です。情報増加に伴い、このUGCの獲得や活用の重要性が上昇しました。
たとえば地図アプリでは、店舗情報を調査した上でレビュー内容を確認するユーザー増えています。これは実際の評判を参考にして来店したい店舗を決定したいという考えが働いているからです。UGCがないメディアとあるメディアでは、あるメディアのほうが信頼性の獲得がしやすいでしょう。
また地図アプリでなくても、SNS上には店舗を利用した感想やおすすめ商品・サービスの紹介がたくさん投稿されています。こういったUGCは広まると自社の信頼性向上や売上成長にまでつながるので、活用を考えたほうがよいでしょう。UGCが集まりやすい仕組みをマーケティングの中で作ることで、UGCの獲得効率は上がっていきます。
ファンベースマーケティングのメリット
ファンベースマーケティングには次のようなメリットがあります。
LTVが向上し長期的なビジネスに
LTVとは顧客が自社ブランドから離脱するまでにどのくらい自社へ価値をもたらしてくれるかを表した指標です。
ファンベースマーケティングを実行すると、このLTVが向上しやすいのがメリットになっています。
たとえば新規顧客を5人獲得しても1年で4人離脱してしまうと、コストパフォーマンスは一気に悪くなります。しかし既存顧客を逃さないように上手く情報・特典を提示して3年も4年も商品購入を続けてくれるような状況を作り出せば、新規顧客獲得よりも効率よく売上を成長させることが可能です。
このように1人1人のLTVを上昇させて売上へつなげることで、高いマーケティング効果を発揮することができます。
良質なファンによる宣伝効果
ファンベースマーケティングで有益な情報を提示し続けて来店や購買へつなげられると、自然に自店舗の評判が上昇します。ファンとなってくれた顧客は、自然に関係者へ店舗情報を提供してくれるためそこからさらに顧客が増加する可能性まであります。
このようにファンベースマーケティングでは、UGCによる宣伝効果で顧客が自然と増加していく可能性まであるのがポイントです。
自店舗で広告を使ったりして新規層を増加させようとするよりも無理なく集客できるので、効率的で低コストなのもメリットでしょう。
さらにインターネット上のUGCは自社でSNS上の引用をしたり、公式サイトへ掲載したりすることで信頼性獲得・コンテンツ情報量確保などにもつなげられます。よいUGCが投稿されたら、ぜひ活用を検討してみてください。
新規獲得よりコストを抑えやすい
パレートの法則でも分かりますが、新規獲得よりもファンベースマーケティングによる既存顧客囲い込みをしたほうがコストが少なくて済みます。
また「1:5の法則」も参考になります。こちらは「新規顧客1人の獲得に掛かるコストは、既存顧客を維持して囲い込むコストの5倍になる」というのを表した法則です。つまり既存顧客の囲い込みを意識することで、コストが5分の1にまで縮小できる可能性があるということです。
当然既存顧客ばかりに目を向けていても、長期的な成長につながりません。しかし新規顧客獲得以上に既存顧客維持を意識してマーケティングを実行することで、新規顧客獲得と既存顧客維持の両面から売上を強化しやすいのは覚えておきましょう。
ファンベースマーケティングの代表的な手法
ファンベースマーケティングには、次のような代表的な手法があります。
SNSでのコミュニティ作り
SNSでコミュニティを作る方法は、代表的なファンベースマーケティングの手法です。
ファンベースマーケティングを成功させるためには、「こちらが顧客の反応をきちんと確認して反映している」というのを分かりやすく見せる必要があります。
そのためSNS投稿に関して「いいね!」や感想コメントなどを店舗側として寄せることで、そこからさらに評判が広がりコミュニティが大きくなっていくことを意識するとよいでしょう。
またSNS上で話題になるような投稿をして、そこからファンの評判を引用投稿などとして獲得するのも重要です。
さらにSNS上で確認した内容について積極的にフィードバックを行うようにすれば、コミュニティの中で寄せられた意見を素早く商品・サービスの改善へ活用して売上成長等につなげられます。
既存顧客向けのイベントを開催する
既存顧客向けのイベントを開催して、そこで店舗と顧客がコミュニケーションを取れるようにするのも有効です。
顧客はイベントの中でスタッフや店舗の雰囲気、コンセプトなどをより身近に感じることができます。
ワークショップや新商品のサンプリング・試食会といったイベントを計画して実行することで、興味のある多くの既存顧客を集めることが可能です。またイベントに関してSNS上での拡散や感想投稿などをお願いすることで、UGCが増加するきっかけを作ることもできます。テコ入れをしたい場合は感想投稿によるプレゼントキャンペーンなども検討してみてください。
オフラインでイベントをするのが難しい場合は、ライブ配信等でオンラインのイベントを開催するのも有効です。オンラインでイベント開催する場合は地域に関係なくイベント参加しやすくなりますし、掛かるコストも減少します。
既存顧客に向けた情報の発信
既存顧客へ向けて定期的に情報を発信するのも重要です。
たとえば自社専用アプリを提供して使っていれば、インストールをきっかけに情報を取得して、さまざまな情報を既存顧客へ向けて発信できます。
- 最新の商品・サービス紹介
- イベントの開催情報
- キャンペーンの開催告知
- 専用クーポンの配布
といったさまざまな情報発信を顧客属性に合わせて実行することで、効率よく継続的な来店や購買へとつなげることができるでしょう。またデジタル会員証・ポイントカードなどを提示できるようにすると、ロイヤリティ醸成にも役立ちます。
アプリのように継続フォローを実行できるツールを用意することで、ファンベースマーケティングがしやすくなることは頭へ入れておきましょう。
ファンベースマーケティングの注意点
ファンベースマーケティングには次のような注意点もあります。
時間と労力がかかる
ファンベースマーケティングには、それなりの時間と労力が掛かります。
ロイヤリティを醸成するためには、
- どんな顧客がファンとなっているのか
- ファンの特徴はどこにあるのか
- どういった施策でさらにロイヤリティを醸成できるのか
といった点をじっくり考える必要があるからです。
獲得した顧客がすぐにファン化するとは限りません。
このため施策の成功度合い等も分析しながら継続してマーケティングを実行していく必要があります。
炎上するリスクがある
ファンベースマーケティングではSNSを利用するケースが多いため、炎上リスクには注意しておかないといけません。
意識していなくても問題ある発言を投稿してしまうと、炎上する可能性が高まります。またUGCを無断で自社公式サイトへ引用したりすると、著作権等でトラブルの元になるリスクにもつながりかねません。
炎上リスクを減らすためには、複数人で投稿内容をチェックしたりする体制が必要です。またUGCをすぐに活用できるように、事前にUGCに関する投稿内容のルール作りや発信もしておきましょう。
「投稿された内容は自社サイト等で使用させてもらう可能性があります」という注意点を公表しておくだけで、炎上リスクは一気に減少します。
ファンベースマーケティングを成功させるポイント
ファンベースマーケティングを成功させるために、次のポイントは押さえておきましょう。
ファンの定義を明確化する
まずはファンとは何か明確にしておくのが重要です。ファンの属性は店舗ごとに違うため、独自で分析を行い状況を把握する必要があります。
- 年齢・性別
- 居住地域
- 趣味
- 購入履歴
- 前提的な消費行動の傾向
といった項目をデータ化して分析することで、ファンの全体像をつかみやすくなります。
顧客とのタッチポイント増やす
ファンベースマーケティングでは適切なタイミングで情報を届けられるように、タッチポイントを増加させる施策も検討する必要があります。
タッチポイントはSNSやオウンドメディアでの投稿を増やすだけでは簡単に増加しません。
タッチポイントの増加には、自社専用アプリの活用をおすすめします。一度インストールされれば継続的に必要な情報をすぐ伝達できるからです。またプッシュ通知で重要な情報を発信できれば、気付いてもらえる可能性が高くなるのも、自社専用アプリならではのメリットになっています。
ファンとの交流、ファン同士の交流を意識する
前述したようにSNSでコミュニティを作ったりイベントを開催したりすることで、店舗・ファンの間、あるいはファン同士のやり取り度合いを増やすことも重要です。
店舗を身近に感じられることで、顧客のロイヤルティは高まりやすくなります。またファン同士でもコミュニケーションすることで店舗に対する意見やよいところの感想などがさらに集まりやすくなるのもポイントです。
まとめ
今回はファンベースマーケティングの概要やメリット・成功させるポイントなどを解説しました。
ファンベースマーケティングは既存顧客の維持が重要になってきている現在、新規顧客獲得よりも重要視されつつあるマーケティング手法です。成功させると顧客から意見を取得しながら、効率よく施策サイクルを回すことができるようになります。
ただしすぐにファンは増えないので、じっくりと施策を実行してSNSやUGC等を活用するのが重要です。
ぜひアプリも活用しながらファンベースマーケティングを成功させてみましょう。