アプリにブロックチェーン技術を活用するメリット|実際の開発事例をもとに解説

業種全般
公開日:2023.02.21 更新日:2026.08.17
アプリにブロックチェーン技術を活用するメリット|実際の導入事例をもとに解説

仮想通貨(暗号資産)は現在需要が増加しており、またメタバースと呼ばれる未来の生活・ビジネス空間にも重要な役割を果たす技術です。そして仮想通貨分野で培われた技術は、他の分野でも当たり前のように取り入れられ始めています。

「ブロックチェーン」も、そんな代表的な技術の1つです。不動産において「スマートコントラクト」といった技術で活用されているブロックチェーンは、アプリマーケティングにも使われています。今回は最新技術でありアプリ業界でも注目されている、ブロックチェーンの概要や事例などを解説します。

あわせて、ブロックチェーンの3つの種類、ブロックチェーンアプリ(DApps)の定義、導入前に押さえておきたい5つの課題、導入手順と費用の目安も取り上げます。

技術の説明だけでなく、自社で使うべきかを判断できる材料まで整理しているので、導入を検討している方は参考にしてみてください。

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ブロックチェーンとは?ブロックチェーンの基本

ブロックチェーンの概要や仕組みといった、基本の部分をご紹介します。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンとは、「取引内容などのデータを鎖状に紐づけて管理するための技術」です。仮想通貨においては金融機関といった取引の中央管理者が存在しないので、従来の「中央集権型」の台帳ではなく「分散型」の台帳で取引を記録していきます。分散型の台帳は、取引を行ったユーザー同士が直接取引を確認して認証、データとして保存するのが特徴です。

特定の場所や国などによらず、どこででもインターネットさえあればリアルタイムの取引管理が可能。この分散型の台帳で取引記録を保存・管理するために、ブロックチェーンが大きな役割を果たしています。

現在では「Web3.0」の普及を推進させるといったような、中央集権型のサービス・技術の仕組みから脱しようという動きがIT業界では進んでいます。ブロックチェーンも特定の政府や機関によらない新しいタイプのサービス・技術を開発するため、今後はより重要になってくるでしょう。

押さえておきたいのが、ブロックチェーンは「分散型台帳技術(DLT)」と呼ばれる技術群のひとつだという点です。分散型台帳のなかで、データをブロック単位でまとめて鎖状につなぐ方式を指します。

仮想通貨はブロックチェーンの応用例のひとつにすぎません。ブロックチェーン=仮想通貨と捉えていると、他の使い道を見落とします。技術としては「複数の関係者が同じ記録を持ち、後から書き換えられない状態をつくる仕組み」だと理解しておくと応用が利きます。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンのブロックは「取引データの一式」、チェーンは「それを鎖状にすること」です。このブロックとチェーンの関係性を理解することで、ブロックチェーンの理解を促進できます。ブロックは通常、次の2つで構成されています。

  • 取引者同士が合意して保存された取引履歴
  • チェーンにするための接続情報

従来のデータは単体のデータを改ざんしても他のデータには特に影響が及ばないため、改ざんのハードルが低いのが特徴でした。こういった弱点をクリアするために、ブロックチェーンでは接続情報というデータがブロック中に保管されています。この接続情報には、各ブロックの1つ前にあるブロックのデータが「ハッシュ値」という形で記録されています。

ハッシュ値とは一定の暗号方式によって求められる「45af〜」といった文字列のことです。ハッシュ値は暗号化前のデータから、1パターンしか作成されません。たとえば「ブロックチェーン」という文字データが「ブロック・チェーン」といった小さい改ざんを行われても、各データを解析した際に算出されるハッシュ値が異なってくるので改ざんを容易に検知できます。

これによってBのデータが改ざんされても、Aには正しいハッシュ値が残っているので改ざん後のBのデータと照合することで改ざんを検知可能です。こういった構造が鎖状にいくつにもつながることで、ブロックチェーンでは高いセキュリティ性が確保されています。

もう1つ押さえておきたいのが、コンセンサスアルゴリズムという仕組みです。中央管理者がいない状態で「どのブロックを正しいものとして採用するか」を決めるルールを指します。

代表的なのが、計算競争で承認者を決めるPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と、保有量に応じて承認権を割り当てるPoS(プルーフ・オブ・ステーク)です。PoWは電力消費が大きい一方で堅牢性が高く、PoSは消費電力を抑えられるという違いがあります。

どの方式を採用しているかで、処理速度、手数料、環境負荷が変わります。基盤を選ぶ際の判断材料になるので、名前だけでも覚えておくと役立ちます。

パブリック・プライベート・コンソーシアムの3種類

ブロックチェーンは、参加できる範囲によって3つに分類されます。どれを選ぶかで実現できることが大きく変わるため、最初に押さえておきましょう。

1つ目がパブリック型です。管理者が存在せず、誰でも自由に参加できます。ビットコインやイーサリアムが代表例で、透明性と検閲耐性に優れます。ただし不特定多数の合意が必要なため、承認に時間がかかり手数料も発生します。

2つ目がプライベート型です。単一の組織が管理し、参加者を制限します。処理が速く、機密性の高い情報も扱えます。社内システムや特定グループ内の業務効率化に向いていますが、中央管理者が存在するため分散のメリットは限定的です。

3つ目がコンソーシアム型です。複数の企業や団体が共同で管理します。業界内でのデータ共有やサプライチェーンの追跡など、組織をまたぐ用途で採用されやすい形式です。

店舗や企業のアプリで検討する場合、NFTや暗号資産を扱うならパブリック型、社内や取引先とのデータ共有ならプライベート型やコンソーシアム型が候補になります。

ブロックチェーンがもたらすもの

ブロックチェーンの普及は、仮想通貨の普及を後押しします。仮想通貨がどこででも使えるようになれば、現金を保有していなくてもスムーズに買い物ができる環境が促進されるでしょう。また仮想通貨に関連して、ブロックチェーンを活用した「NFT」という作品をデザインして、販売を行う事例も増えてきました。

仮想通貨以外の分野では、破壊的な改革をもたらすとまで言われています。従来の中央集権的な管理方法が通用しなくなるため、金融機関や中央管理者を用意してサービスを提供しているような企業は、ビジネス的な方針転換を迫られる可能性も出てくるでしょう。仮想通貨やブロックチェーンにおいては、次のような課題がまだ残っています。

  • 分散型の取引でどうやって信頼性を確保するか
  • 管理者が増加するのでどうやって運用面等を効率化するか
  • いったんブロックが保管されると取引当事者も変更できない弱点をどうするのか

しかしこういった課題は時代が進むにつれて解決するものであるため、将来的にブロックチェーンの普及・一般化は間違いないものと見てよいでしょう。今のうちにある程度の理解をしておくことが、生活・ビジネスの両面で重要になってきます。

国内でも、Web3.0とブロックチェーンは政策として位置づけられています。経済産業省は2022年に大臣官房Web3.0政策推進室を設置し、事業環境の整備に向けた検討と実証事業を進めてきました。

出典:経済産業省「Web3.0」

同省がまとめた「Web3.0事業環境整備の考え方」では、文化経済領域の産業振興、金融商品の多様化、社会課題解決の促進といった分野で影響が見込まれるとされています。

出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」

技術的な将来性だけでなく、制度面の整備がどこまで進んでいるかも導入判断に関わります。公的機関の資料は定期的に更新されるため、検討時には最新版を確認しておきましょう。

ブロックチェーンアプリ(DApps)とは

技術の説明に続いて、それをアプリに組み込むとどうなるかを整理しておきます。ここが曖昧なままだと、実際に何ができるのかがつかめません。

一般的なアプリとの違い

ブロックチェーンを活用したアプリは、DApps(分散型アプリケーション)と呼ばれることがあります。データの保存や処理の一部をブロックチェーン上で行うアプリを指します。

一般的なアプリとの最大の違いは、データの置き場所です。従来のアプリは企業が用意したサーバーにデータを保管しますが、DAppsではブロックチェーン上に記録します。

この違いから、運営企業がサービスを終了しても記録は残るという性質が生まれます。ユーザーが取得したNFTなどの資産は、アプリが停止しても手元に残ります。

ただし、すべてをブロックチェーンで処理するアプリは実務では少数です。多くは通常のアプリを土台に、資産の記録や証明が必要な部分だけをブロックチェーンで扱う形をとっています。

スマートコントラクトとウォレット

ブロックチェーンアプリを理解するうえで欠かせないのが、この2つの用語です。

スマートコントラクトは、あらかじめ決めた条件が満たされたときに自動で処理を実行する仕組みです。「入金が確認されたら権利を移転する」といった処理を、人の手を介さず実行できます。仲介者を挟まずに取引を完結させられるのが利点です。

ウォレットは、ブロックチェーン上の資産を管理するための入れ物にあたります。実際には資産そのものではなく、取引に必要な鍵(秘密鍵)を保管する仕組みです。

ウォレットには、利用者自身が鍵を管理する形式と、事業者が預かる形式(クラウドウォレット)があります。一般ユーザー向けのアプリでは、鍵の管理を意識させない後者が採用されることが多い傾向にあります。

ブロックチェーンアプリの主な種類

用途によって、大きく4つに分けられます。

1つ目がNFT・デジタル所有権です。会員証、チケット、デジタルアイテムなどを、譲渡や真贋確認ができる形で発行します。2つ目がトレーサビリティです。原材料から製品までの流通経路を記録し、消費者が確認できるようにします。

3つ目がポイント・トークンです。企業独自のポイントをトークンとして発行し、他社との相互利用や譲渡を可能にします。4つ目が契約・証明です。スマートコントラクトを使い、契約や資格証明を自動化します。

店舗や企業のアプリで検討しやすいのは、1つ目と3つ目です。既存の会員証やポイント制度を、ブロックチェーンで拡張するという発想になります。

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アプリ・仮想通貨分野以外でのブロックチェーンの事例

アプリや仮想通貨分野以外でも、ブロックチェーンは次のようなところで活躍しています。

電力会社

電力会社もブロックチェーンの仕組みを、電力の取引に活用しようとしています。ある中国の電力会社は、大手IT企業と組んで再生可能エネルギーの固定価格取引制度へブロックチェーンを応用したシステムを導入しました。一人ひとりが蓄電して集めたエネルギーを、電力会社へ販売することが可能になります。

この分野で注目されているのが、個人間での電力売買(P2P電力取引)です。中央の事業者を挟まずに、余剰電力を持つ人と必要とする人を直接つなぐ仕組みが検討されています。

不動産

不動産ではスマートコントラクトという形で、ブロックチェーン技術を主に物件の契約へ活用しようとしています。スマートコントラクトではスピーディーに、そして自動で物件の契約情報の保管や処理を進めることが可能です。これによって契約情報入力から入金、取引内容の承認といった各プロセスを完全自動化して確実に管理できるようになります。

スマートコントラクトによってユーザーはオンライン上から簡単に物件契約などの取引ができるようになり、また不動産会社側も業務負担削減を実現できるようになることもメリットです。

不動産分野では、物件の権利を小口に分けて流通させる取り組みも進んでいます。従来は登記や重要事項説明の費用がネックになっていた領域で、ブロックチェーンによって流通コストを下げる試みです。

アパレル業界

アパレル業界ではNFTを通じて、新しいアパレル体験ができるようにサービスを提供している事例があります。ある有名なスニーカー小売企業では、自社のスニーカーを対応のウォレットアプリでスキャンすることでNFTを発行、デジタル空間上でも取得して利用することができる仕組みを構築しました。

アバターが着用できるようなスニーカーをNFT形式で提供することで、偽造されない所有物として気軽にスニーカーをメタバース上で着用できるようになっています。

アパレルでブロックチェーンが効くもう1つの領域が、真贋証明です。高価格帯の商品では模倣品が問題になりますが、製造時にデジタル証明書を紐づけておけば、中古市場でも本物であることを確認できます。

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アプリにブロックチェーン技術を活用した事例

ここからは、アプリにブロックチェーン技術を活用した事例をご紹介します。

上新電機

家電量販店大手の「上新電機」は、マーケティングのコンサルティング企業やブロックチェーンサービス提供企業などと提携して新しいプログラムをアプリで提供開始しました。上新電機ユーザーに提供されている「ジョーシンアプリ」に、ブロックチェーン技術を活用した新たな機能を組み込んで顧客獲得へ活用しています。

  • アカウントから新規でブロックチェーンを活用したクラウドウォレットを作成可能
  • クイズに回答して正解する、といった一定のアクションでジョーシンコインを獲得
  • 貯まったコインをNFTデータと交換することが可能

といった仕組みを提供することで、さらなるリピーターの獲得やロイヤリティプログラムの利用促進へつなげようとしているのでしょう。クラウドウォレットはスムーズに作成でき、パスフレーズを使うことで簡単に復旧することができます。またブロックチェーンでデータ管理しているので、むやみに個人データが企業へ取得されることはありません。

さらにジョーシンコインという専用の景品をゲーム等で獲得して利用することで、NFTという形で独自の資産を保有できる点もメリットです。上新電機がアプリ内で構築してきたプログラムをNFT関連のサービスによって補強することが、今回の企業提携の目的となっています。今後は普及が見込まれるメタバースといったWeb3.0回りの技術への対応も視野に入れています。

この事例で参考になるのが、既存のアプリを土台にしている点です。ゼロから新しいアプリを作るのではなく、すでに会員が使っているアプリへ機能を追加する形をとっています。

ブロックチェーンを目的にするのではなく、既存のロイヤリティプログラムを強化する手段として使うという位置づけです。この考え方は、規模を問わず応用できます。

スターバックス

スターバックスはさまざまなITへの投資・および活用へ積極的な企業です。中小企業向けの大手決済サービス「Square」へ投資したり、モバイルオーダー機能をアプリへ導入してスムーズな来店・決済等へつなげたりとさまざまな取組を行っています。

ブロックチェーンにおいては、「トレーサビリティへの活用」を視野に取組を進めています。スターバックスのアプリサービス内でトレーサビリティを確認できる機能を追加しました。まだ試験段階であり改善の余地がある機能ですが、将来的にはさらに確認できる内容等が拡大する可能性もあります。

具体的にはシステム基盤を、マイクロソフト社が提供している「Azure」で構築しています。コーヒー豆の調達から製品としての提供までをブロックチェーンでデータ管理することで、顧客がそのデータを照合できるという仕組みです。顧客はアプリからスターバックスのコーヒー製品に記載してあるコードを読み込むことで、次のような情報を確認できます。

  • 生産元の農場
  • スターバックスとの関係性
  • 実際に焙煎されて袋にパッケージングされた場所

アプリから気軽にトレーサビリティを確認できるようにすることで、信頼性の確保などへつなげられるでしょう。またコーヒー豆の生産者といった製品提供者側から見て、自分が生産しているコーヒー豆の品質等を確認してモチベーション向上へつなげられるのもメリットだとスターバックスは説明しています。

ちなみにスターバックスでは他にもNFTを通じて限定イベントの招待などを行う「スターバックス・オデッセイ」の提供も発表しており、ブロックチェーンに関係した技術を今後も活用していく予定です。

この事例のポイントは、ブロックチェーンをユーザーに意識させていないことです。顧客が行うのはコードを読み込む操作だけで、裏側の技術を知る必要はありません。

一般ユーザー向けのアプリでは、技術を前面に出すほど利用のハードルが上がります。何が便利になるかだけを伝え、仕組みは裏側に隠す設計が現実的です。

2つの事例から読み取れる共通点

業種も用途も異なる2社ですが、進め方には共通点があります。

1つ目が、既存のアプリに後から組み込んでいることです。会員基盤がある状態で機能を追加しているため、リリース直後から利用者がいます。

2つ目が、用途を1つに絞っていることです。上新電機はロイヤリティプログラム、スターバックスはトレーサビリティと、それぞれ目的が明確です。

3つ目が、外部の専門企業と組んでいることです。ブロックチェーンの実装は専門性が高いため、自社ですべてを抱え込まず、基盤部分は外部の技術を使っています。

検討する際は、この3点をそのまま進め方の指針にできます。まず会員基盤を持ち、用途を1つに絞り、基盤は外部を使うという順番です。

関連記事:Webサイトをアプリ化するメリット・デメリット、目的次第でアプリ化すべきかは変わる?

アプリにブロックチェーン技術を活用するメリット

アプリにブロックチェーンを活用するメリットは次の通りです。

企業間のデータ共有が簡単で提供できるサービスが増える

今までは企業間でデータ共有を行う際、仲介機関を通すなどの手間が発生していました。こういった手間はビジネスのスピードを下げるだけでなく、コストが掛かるといったデメリットもあります。ブロックチェーンでは、仲介機関を通さなくても当事者間で直接契約といった取引が可能です。

この特徴によってビジネスのプロセスを実行するスピードが向上し、また手数料といったコストを掛けずに取引を実行できるメリットまで得られます。また別組織・企業間で簡単にデータを共有できるため、従来よりもさらに提供できる技術・サービスが増え、分析できるデータも増加します。こういったメリットはアプリによってシステムを開発して店舗等で利用する際にも、私たちに大きなメリットをもたらしてくれるはずです。

店舗で応用しやすいのが、複数の企業をまたいだポイントや会員特典です。従来は運営主体を決めてシステムを共同構築する必要がありましたが、ブロックチェーンなら共通の台帳を持つ形で実現できます。

商店街や商業施設のように、独立した事業者が集まる場面と相性のよい使い方です。

セキュリティ技術が向上する

先述した通り、ブロックチェーンではハッシュ値で鎖状にブロックを紐づけることで、高い改ざん防止性を確保しています。ハッカーが検知されずに改ざんを行うには、複数のブロックのハッシュ値などを考える必要があるため攻撃は困難です。

アプリでも重要な機能・サービスにブロックチェーンを活用して管理を行うことで、改ざんや情報漏洩といった致命的なトラブルを回避しながら安全にアプリを提供できるようになるでしょう。さらにブロックチェーンでは「電子署名」を用いて、取引者同士が信頼性があり情報改ざんなどを行っていないことを証明する仕組みも用意されています。ブロックチェーンと併せて活用することで、取引の正確な記録を残しながらアプリのセキュリティをさらに強固にすることが可能です。

ここで注意したいのが、ブロックチェーンが守るのは「記録の改ざん」だけという点です。アプリ本体の脆弱性、不正ログイン、鍵の盗難といったリスクは別に対策が必要になります。

「ブロックチェーンを使えば安全」という理解は正確ではありません。記録の正しさは保証されても、その記録を作る手前の部分は従来どおりの対策が要ると考えておきましょう。

システムの耐久性が確保される

ブロックチェーンでは「P2P」という仕組みが用いられています。P2Pは今までの中央機関がサーバーを用意してデータ管理や処理を行う方式とは違い、取引者が保有しているコンピューターによって主体的にデータを管理・処理するものです。複数の取引者が保有しているコンピューター同士がつながることによって大きなネットワークを形成していきます。

特定のサーバー等によらない取引ができるので、中央のサーバーが存在する方式と比較して耐久性が高くなるのがメリットです。中央集権的なシステム構築だとメインサーバーがダウンすることで機能がまったく使えなくなるといった大きなトラブルが起きますが、P2P方式のシステム構築だと一部コンピューターがダウンしても取引の体制は維持されます。

メインサーバーが存在しない分一人ひとりの利用デバイスへ負荷が掛かりやすいデメリットもありますが、将来的に今よりマシンスペックが上がればこの問題は解決されるでしょう。

この耐久性が意味を持つのは、サービスが長期にわたって使われる場合です。会員証やデジタル資産のように、10年単位で残ることが価値になるものと相性がよくなります。

アプリのシステムを安価に構築できる

システム構築のコストを考えても、ブロックチェーンを活用するメリットがあります。中央集権的なサーバー構築方式だと、アプリシステムがダウンしても体制を維持するためのサーバーの用意、また耐久性のあるシステムの確保などに対して高額なコストが掛かります。実際に、コスト面でシステム構築を断念した事例も少なくなかったでしょう。

対してブロックチェーンを活用すると、ユーザーが保有しているコンピューターがデータ保管や処理などの役割を受け持ちます。これによってアプリシステム提供側ではサーバーを複数用意して冗長性を確保したり、耐久性のある高いスペックを有しているサーバーを用意したりする必要性を小さくすることが可能です。

結果的に従来のアプリシステム構築費がブロックチェーンを活用することで安価となり、断念していたようなアプリシステムの提供の実現に関してもハードルが下がります。

ただし、サーバー費用が下がる代わりに別の費用が発生する点は押さえておきましょう。パブリック型のブロックチェーンでは、記録のたびに手数料(ガス代)がかかります。

手数料はネットワークの混雑状況によって変動するため、利用が増えるほどコストが読みにくくなるという性質もあります。試算の際は、想定される取引件数から幅を持って見積もっておく必要があります。

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導入前に押さえておきたい5つの課題

メリットの裏側にある制約も整理しておきます。ここを知らずに進めると、途中で頓挫する原因になります。

処理速度とコストの制約

パブリック型のブロックチェーンは、1秒あたりに処理できる件数が限られています。承認を待つ時間が発生するため、即時性が求められる決済や注文には向きません。

あわせて、記録のたびに手数料がかかります。少額の取引を大量に扱う用途では、手数料が取引額を上回ることもあります。

対策としては、処理の一部を通常のサーバーで行い、記録が必要な部分だけをブロックチェーンに書き込む設計が一般的です。

データを消せない・修正できない

改ざんできないという特性は、間違いを直せないという制約と表裏一体です。誤った情報を書き込んでも、後から削除することはできません。

とくに注意が必要なのが、個人情報を直接書き込まないという点です。個人情報保護法では本人からの請求に応じて削除する義務が生じる場合がありますが、ブロックチェーン上では対応できません。

実務では、個人情報は通常のデータベースに保管し、ブロックチェーンには識別子やハッシュ値だけを記録する設計が使われます。

鍵の管理をユーザーに委ねることになる

ブロックチェーン上の資産は、秘密鍵を持つ人だけが動かせます。裏を返せば、鍵を失えば資産にアクセスできなくなります

銀行のようにパスワードを再発行してくれる管理者はいないため、一般ユーザー向けのサービスでは大きなハードルになります。

この課題への対処が、事業者が鍵を預かるクラウドウォレットです。前章で紹介した上新電機の事例でも、この方式が採用されています。分散のメリットは一部失われますが、利用者の裾野を広げるうえでは現実的な選択です。

法規制と会計・税務の扱い

トークンやNFTを発行する場合、その性質によって適用される法令が変わります。資金決済法上の暗号資産に該当するのか、前払式支払手段にあたるのか、金融商品取引法の対象になるのかで、必要な手続きが異なります。

たとえば、自社サービス内でのみ使えるポイントと、外部で換金できるトークンでは扱いがまったく違います。企画段階で法務の確認を入れておかないと、開発後に設計をやり直すことになりかねません。

会計や税務の取り扱いについても、実務上の解釈が更新され続けている領域です。公的機関や監督官庁の公表資料を確認しながら進めるようにしましょう。

一般ユーザーにとってのハードル

技術的な課題以上に大きいのが、利用者側の理解です。ウォレット、秘密鍵、ガス代といった概念は、一般の消費者にとってなじみがありません。

店舗アプリのように幅広い年齢層が使うサービスでは、専門用語を出した時点で離脱されると考えたほうが安全です。

スターバックスの事例のように、技術を裏側に隠し、体験だけを見せる設計が求められます。「NFTがもらえます」ではなく「限定デザインの会員証がもらえます」と伝えるほうが、実際には利用されます。

ブロックチェーンアプリの導入手順と費用の目安

実際に検討を進める場合の流れと、費用感を整理しておきます。

導入までの5ステップ

1つ目が、解決したい課題の整理です。ブロックチェーンありきで考えず、「何を実現したいか」から始めます。ここが曖昧だと、後の判断がすべてぶれます。

2つ目が、ブロックチェーンが必要かの見極めです。通常のデータベースで足りるなら、そちらのほうが安く早く済みます。

3つ目が、種類と基盤の選定です。パブリック型かプライベート型か、どの基盤を使うかを決めます。処理速度、手数料、実績を比較します。

4つ目が、小規模な検証です。いきなり全機能を作らず、限定した範囲で試します。5つ目が、本格導入と運用体制の整備です。監視、障害対応、法令の変更への対応までを含めて設計します。

開発費用と期間の目安

費用は要件によって大きく変わりますが、考え方の目安を挙げておきます。

既存のプラットフォームやサービスを利用する場合は、初期費用と月額利用料の組み合わせになります。ゼロから作るより大幅に安く、期間も短く済みます。

独自に開発する場合は、スマートコントラクトの設計と監査が必要になるため、数百万円から数千万円規模になることも珍しくありません。期間も数か月以上を見込む必要があります。

見落とされがちなのが、運用時にかかり続ける費用です。取引ごとの手数料、基盤のアップデートへの追随、法令変更への対応などが継続的に発生します。初期費用だけで判断しないようにしましょう。

ブロックチェーンが向く用途・向かない用途

最後に、判断の基準を整理しておきます。向いているのは、次の3つを満たす用途です。

1つ目が、複数の関係者が同じ記録を共有する必要があること。2つ目が、記録が改ざんされていないことを証明する価値があること。3つ目が、中央の管理者を置きたくない、または置けないことです。

逆に、自社だけでデータを管理していて、書き換えられても問題がない用途には向きません。来店履歴の記録やクーポンの配信といった一般的な店舗施策は、通常のアプリとデータベースで十分に実現できます。

技術を使うこと自体が目的にならないよう、まず課題から出発して判断してみてください。

関連記事:店舗アプリ作成サービスおすすめ比較8選!選び方や費用を解説

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まとめ

今回はブロックチェーンの概要や事例などを解説しました。ブロックチェーンは仮想通貨に限らずさまざまな分野で活用されており、将来的なITの進化においても重要な役割を果たしていくでしょう。アプリにおいても導入することで新しい機能を開発したり、セキュリティを確保したりと複数のメリットを得ることができます。

弊社では「店舗アプリDX版 raiten」を提供しております。ブロックチェーンといった最新のITに関して興味があり、今後アプリをマーケティングで活用していきたいと考えている方は、弊社がお役に立てるかと思いますので、ぜひ相談くださいませ。

あわせて、ブロックチェーンの3つの種類、DAppsの定義、導入前の5つの課題、導入手順と費用の目安も取り上げました。

ブロックチェーンは万能な技術ではなく、向き不向きがはっきりしています。複数の関係者で記録を共有する必要があるか、改ざんされていない証明に価値があるかを基準に、自社の課題と照らして判断してみてください。

当てはまらない場合は、通常のアプリで十分に成果を出せます。まずは会員基盤を整えるところから始めるのが、遠回りに見えて確実な進め方です。

この記事を監修した人

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