実店舗でのサブスクリプションの活用方法
「サブスクリプション」は買い切り型のモデルとは違い、月額や年額などで収益を継続して獲得できるのが特徴です。買い切り型のモデルより長期的に収益を確保できるメリットは、コロナウイルスの影響で収益が不安定になりがちな実店舗でも活かせます。
サブスクリプションはWebサービス分野で焦点が当たりがちですが、最近では飲食店といった実店舗での活用も広まっています。最新事例をマーケティング情報として取り込みサブスクリプション提供のポイントを理解することで、新しいビジネスモデルを構築可能です。
今回はサブスクリプションモデルの導入を検討している実店舗担当者の方へ向けて、サブスクリプションのメリット・デメリットや成功事例、そして実際に提供するときのポイントなどをご紹介していきます。
目次
サブスクリプションとは?メリット・デメリットを解説
サブスクリプションには次のようなメリットやデメリットがあります。
企業・事業者のメリット / デメリット
企業や店舗側には次のようなメリットがあります。
メリット
- 継続的に売上を見込めるようになる
- ユーザーの導入ハードルを下げて新規顧客を獲得しやすくなる
- 継続的にデータを収集してマーケティングに活かせる
- プランのアップセルやクロスセルも狙える
サブスクリプションは解約されない限り定期的に課金されるので、買い切り型のモデルと比較して長期的に顧客と関係を結べます。長期的に利用されればされるほど利益も向上し、買い切り型のモデルより収益が増える可能性があるのがメリットです。
また月額でサービスを提供すると、買い切りで購入するより初期の導入費用が抑えられる分ユーザーが気軽にサービスを導入してくれやすくなります。その分新規顧客が増えてリピーターになってくれる可能性があるのもメリットです。
さらにサブスクリプションではリアルタイムで顧客のサービス利用データを収集可能であり、性別や年齢、興味のあるサブスクリプションコンテンツなどをデータから分析して把握することでマーケティングをパーソナライズして適したアプローチができるようになります。
サブスクリプションを利用する中で多様なプランを提示できれば、グレードアップしたいお客様をアップセルして1つ上のプランへ格上げしたり、他のプランにも誘導してクロスセルを狙ったりといった施策も実現可能です。
デメリット
- 最初から利益が出ない仕組みであり、長期的な運用が必要
- コンテンツを更新しないと離脱が増える
- ブランド価値が下がる危険もある
サブスクリプションの収益は、一般的に「利用者×月額や年額で獲得できる収益×期間」となります。サブスクリプションを提供するにはそれなりの投資が必要です。投資に対して収益が上回るのは時間が掛かるので、いつごろ収益が出るようになるのか前もって「損益分岐点」や「ARPU」といった指標で計算しておく必要があります。
またサブスクリプションは鮮度が命です。「PayPay」が地道なユーザーのデータフィードバックなどを通じてサービスを改善しトップのキャッシュレスサービスへと成長したように、定期的にユーザーの声を反映させて適切なサービスへコンテンツを更新していく柔軟性が必要になります。
また「高級な商品を月額換算で安過ぎる値段で利用できてしまう」といった状況は、返ってブランド価値を傷つけて店舗のイメージを悪くしてしまう危険があるので注意が必要です。自店舗の商品やサービスがサブスクリプションに適しているか、そしてどのような価格設定にすればブランド価値を維持しながらビジネスモデルを構築できるかを考える必要があります。
利用者・ユーザーのメリット / デメリット
利用者・ユーザー目線でメリットとデメリットを切り分けると次のようになります。
メリット
- 頻繁に商品やサービスを利用する場合総合的に安くつきやすい
- 好きなタイミングで解約がしやすい
- モノ消費をせずにコト消費ができるので楽
サブスクリプションサービスは、指定の商品やサービスを定期的に利用するユーザーほどお得になるビジネスモデルになっています。たとえば毎月2,000円で映像作品をレンタル店から借りるよりも、月額1,000円の映像配信サービスへ登録して見放題プランを利用したほうが安上りです。レンタル店へ通う労力も減って楽に映像を楽しめるようになります。
また買い切り型だと費用が掛かりますし、返品といった行動もしにくいので購入へのハードルが高いケースもあります。しかしサブスクリプションサービスだと月額課金で少しずつお金を払えば済むので気軽に導入しやすいです。好きなタイミングで解約がしやすいのも人気がある理由の1つになります。
さらに買い切り型だと商品を設置するスペースや管理の手間が掛かります。一方サブスクリプションサービスの場合提供先から商品を借りている形式になるので、コト消費ができるという点でメリットがあります。コト消費では商品を設置するスペースや管理の手間などが減るので気軽に商品を利用可能です。
デメリット
- 頻繁に利用しないと元が取れずコストがかさむ
- 解約するとすべてのサービスが利用できなくなる
サブスクリプションサービスでは月額や年額で定期的に料金が発生します。ユーザーとしては定期的に発生する料金以上にサービスを利用できないと元が取れません。利用料金に対してサービスの価値が見合わずコストがかさんでしまう危険があります。
また解約すると全サービスが利用できなくなってしまうのもデメリットです。買い切り型の場合最初から商品を所有している状態なので、壊れない限りずっと商品を利用可能です。しかしサブスクリプションサービスでは商品を借りている状態なので、再度商品を利用したい場合はサービスに再度登録する手間が掛かります。
店舗でサブスクリプションサービを導入するメリット
ここでは店舗で実施されているサブスクリプションサービスの特徴を解説していきます。
リピーターを増やせる
サブスクリプションサービスを導入すると、お客様のリピート促進が狙えます。一度サブスクリプションサービスに入ると、「継続して使わないともったいない」という心理がお客様へ発生するからです。
リピート促進において動機付けは重要です。サブスクリプションサービスを導入すれば他店を代わりに利用する際のスイッチングコストを高くできます。
つまり他店へお客様が流れてしまう状況を防いで効率よくリピーターを獲得できるようになります。
登録方法が複数用意すれば手続きが簡単になる
・スマホ
・タブレット
・パソコン
サブスクリプションは上記のようなお客様が持っている端末から自由に登録して使えるのも特徴です。オンライン上で手続きが完了すれば登録するハードルが低いので気軽に利用できます。決済方法を充実させればさらに利用者は増加するでしょう。
そして店頭でも手続きができるようにしておけば、「店頭で説明を聞きながら手続きしたい」といったニーズがあるお客様も逃さずに囲い込めます。
安定した収益が発生するのでコロナ対策にもなる
サブスクリプションでは定期的に発生する金額に利用者、そして継続期間を掛けた数値が売上として店舗へ入ってきます。
料理や洋服などを買い切り型で提供するよりも安定した収益が見込めます。
コロナウイルスの影響で売上が政府政策などに左右されがちな今の状況下で、安定した売上を見込めるのは大きいでしょう。
ちなみに収益の計算が簡単な分、前もって収益の増減を把握して戦略を打てるようにしやすいのもサブスクリプションを店舗が導入するメリットになります。
アップセルやクロスセルなどを狙える
Webサービス上でのサブスクリプションモデル提供と同じく、実店舗でのサブスクリプションサービス提供においてもアップセルやクロスセルなどが狙えます。
サブスクリプションサービスを利用しているお客様は積極的に店舗を利用してくれるようになるので、その分データも集まりやすいですしタッチポイントも増加します。
その中で新商品やサービスの紹介、おすすめの活用方法などを上手く説明できれば新しいサブスクリプションを利用してくれたりする可能性は十分にあると言えるでしょう。
アップセルやクロスセルを行う場合は、データに基づいて押し売りにならないようユーザーファーストの接客を行ってみてください。
多くの業種で採用可能である
サブスクリプションはビジネスモデルとして汎用性が高いのも特徴です。実店舗では今のところ飲食店の導入事例が多いですが、
・アパレル
・家電
・自動車
といった商品を扱う業種でも導入事例が広まっています。
ただし汎用性が高い分、自分の業種や経営構造に合ったカスタマイズが必要です。
価格設定や提供する内容、告知方法などを工夫してサブスクリプションを成功させられるよう努力を行っていきましょう。
店舗で実施したサブスクリプションサービスの事例
ここからはサブスクリプションサービスの事例をご紹介していきます。
coffee mafia西新宿
「coffee mafia」はカフェ業でいち早くサブスクリプションサービスを取り入れた店舗として注目を集めています。
・LIGHT:月額3,000円
・STANDARD:月額4,800円
・PREMIUM:月額6,500円
の3つから好きなプランを選んで購入を行い、店舗へ来店してもらうスタイルを取っています。
コーヒーは外食すると高くついてしまいますが、サブスクリプション形式にすることで気軽に本格的なコーヒーが飲めるようになっているのがポイントです。
ばんからラーメン
「東京豚骨拉麺ばんから」、「旭川味噌ラーメンばんから」といった店舗経営を行っている「ばんからラーメン」では、2020年2月よりサブスクリプションサービスの提供を開始しました。
1ヶ月6,800円で1日1杯が食べ放題の「ラーメンパスポート」、1ヶ月300円で味玉やメンマなどのトッピングができる「トッピングパスポート」などを用意して集客を行っているのがポイントです。専用サイトにアクセスしてアカウント登録すると購入できる仕組みになっており、顧客データを収集する導線がしっかりでき上っています。紙の定期券などと違ってスマホから気軽に会員証を出してサービスを受けられるのもポイントです。
野郎ラーメン
熱狂的ファンも多い「野郎ラーメン」では、2017年10月と比較的早い時期からサブスクリプションサービスの提供を開始しています。
1日1杯対象ラーメンを食べ放題の「1日一杯野郎ラーメン生活」を月額8,600円で提供中です。熱狂的なファンの多い野郎ラーメンと継続利用を促すサブスクリプションサービスは相性がよいと言えます。
「野郎ラーメンアプリ」からサービスを利用できるようになっているのもポイントです。効率よく情報発信しながらリピート促進ができるアプリを有効活用しています。
焼肉店とらじ亭
東京に本拠を置く「焼肉店とらじ亭」では、月額2,980円の飲み放題サブスクリプションサービスを提供しています。100種類以上のドリンクから好きなものを選んで毎日2h飲めるようになっているのがポイントです。
また単にサブスクリプションとしてではなく、「オンラインサロン」として総合的なロイヤリティにかかわるサービスを提供しているのもポイントになります。飲み放題だけではなく店内の極秘情報を会員限定で公開したり、サロン上で会議ができたりといった機能を提供することでロイヤリティ醸成にもつながています。
串かつでんがな
「串かつでんがな」は500円で購入できる「定期券(パスチケ)」を店舗に導入しています。
ドリンク1杯を注文するごとに毎回100円が値引きされます。また有効期間中に再来店すると「でんがなソース1本」もしくは「おまかせ串3本」がプレゼントされるのもポイントです。定期券を購入してくれたお客様が積極的に来店してくれるためのインセンティブを整備しています。
串カツ田中
串カツ専門店の代名詞と言える「串カツ田中」では、月額500円で飲み放題になる「田中で飲みpass」を提供しています。チケットの購入日より1ヵ月間ドリンクが199円で提供されるのが特徴です。
田中で飲みpassはカードタイプの他Webサイトから発行するタイプがあり、好きなほうを選んで顧客は串カツ田中で飲み放題を楽しめるようになっています。高いドリンクも199円で飲めるようになっていることから、多くの来店者の好評を集めているのがポイントです。
店舗でサブスクリプションを開始するための方法
ここからは店舗でサブスクリプションを活用する方法を解説していきます。
サブスク商材を準備する
まずはサブスクリプションに利用する商材を準備します。
サブスクリプションでは利用継続が収益に大きく影響しますが、商材の原価も重要です。商材の原価の高いものばかりを選択してしまうといつまでも元が取れず、ビジネスモデルとして成り立たなくなる可能性があるからです。
サブスクリプションには「原価が低くて人気がある」商材が適しています。大量生産しやすい分原価を低く設定できるドリンクは代表的な商材の1つです。
自店舗に合わせた商材を用意して集客を行いましょう。
サブスク利用方法と購入フローを準備する
次にサブスクリプションの利用方法と購入までの流れを準備していきます。
利用方法には
- Webサイトからアクセスして手続きする
- アプリ上で手続きを完結させる
- 店舗で登録を行う
といった方法があります。
複数のお客様のニーズに合わせられるように、登録方法も複数用意しておけると安心です。
また購入フローにおいては、決済方法の準備も必要です。
- クレジットカード
- 電子マネー
- QRコード決済
といった多様な方法で決済できるようにすると利便性が高まり、利用者の増加を見込めるようになるでしょう。
利用促進のためのプロモーションを行う
サブスクリプションサービスを用意しただけでは不十分です。ターゲットユーザーに情報が届くよう、店舗やオンライン上で利用促進のプロモーションを行いましょう。
- プレスリリースで情報発信する
- SNSで拡散を狙う
といった自店舗に合った方法で宣伝を行ってみてください。
ちなみに公式アプリからサブスクリプションサービスへリンクを貼って利用履歴などを確認できるようにすれば、アプリのアクセス数も増加して施策を打ちやすくなるのも覚えておきましょう。
まとめ
今回はサブスクリプションのメリット・デメリットや成功事例、そして実際に提供するときのポイントなどをご紹介してきました。
サブスクリプションサービスはWebサービスに限らず、実店舗のサービスにも活用可能です。ドリンクを飲み放題にする、メインメニューを1日1杯だけ無料にするといった施策でサブスクリプション提供に成功している店舗もあります。
複数の登録チャネルを用意する、プロモーションを積極的に行うといった工夫も忘れないでサブスクリプションを導入してみてください。
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