アプリ開発の要件定義とは?要件定義書の書き方・項目と進め方のポイントを解説

業種全般
公開日:2023.08.22 更新日:2026.08.21
アプリ開発の要件定義を一覧化。アプリ開発の流れから要件定義書作成時のポイントを解説

アプリ開発における要件定義は、開発のベースとなる非常に重要な工程です。要件定義の内容を基に設計や開発が進むため、ここが曖昧だと開発全体に支障をきたすリスクがあります。

本記事では、アプリ開発の要件定義とは何か、要件定義書に記載すべき項目や作り方、作成時のポイントまでを解説します。要件定義の流れを理解して、スムーズなアプリ開発につなげてください。

あわせて、要求定義や設計との関係、機能要件と非機能要件の違い、要件定義書に入れておきたい項目の一覧、優先順位の整理方法、そして現場で起こりやすい失敗と対策までを取り上げます。発注者側として関わる方にも読み進めやすいよう、専門用語はできるだけかみ砕いて説明します。

目次

アプリ開発における要件定義とは

開発のベースとなる要件を決めていく上流工程のこと

アプリ開発における要件定義とは、アプリの開発目標を明確化するために必要な開発要件を決めていく作業です。アプリ開発は「企画立案→要件定義→設計→開発→テスト→リリース→運用・保守」の流れで進みますが、要件定義は企画立案とともに「上流工程」と呼ばれる開発前の重要な準備工程に位置づけられます。

要件定義の内容を基に、さらに開発環境や言語、デザインや機能などを細かく指定した設計書が作成されます。そのため要件定義が曖昧だと、その後の設計・開発・テストすべてに影響が及び、開発が滞る危険性があります。外注する場合は基本的に開発業者が作成しますが、発注者側でも協力する部分が多く、自社開発の場合は自作する必要があります。

なお、要件定義と似た言葉に「要求定義」がありますが両者は異なります。要求定義はアプリ開発に詳しくない発注者側が作成するもので、作りたいアプリのジャンルや概要、必要な機能、ターゲットユーザーのイメージなどをまとめた書類です。要求定義が「どんなアプリを作りたいか」を伝えるためのものであるのに対し、要件定義はそれを技術面も含めて具体化したものです。外注の場合は要求定義をクライアントが作り、要件定義は開発業者が作成するという役割分担になります。

要求定義・要件定義・設計の関係を整理する

混同しやすい3つの言葉は、「何がしたいか」「何を作るか」「どう作るか」と置き換えると整理しやすくなります。

要求定義は発注者側の「何がしたいか」です。売上を伸ばしたい、来店頻度を上げたいといった課題と、そのために欲しい機能のイメージが中心になります。

要件定義は「何を作るか」です。要求を受けて、実際に搭載する機能、対応するOS、想定ユーザー数、スケジュールなどを技術的に成立する形へ落とし込みます。

設計は「どう作るか」です。画面ごとの構成、データベースの構造、処理の流れなど、開発者が実装するための具体的な指示書にあたります。この3段階が順につながっているため、前の工程が曖昧なまま次に進むと後戻りが発生するという関係になっています。

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アプリ開発の要件定義書に記載する項目

業務要件とシステム要件の2つで構成される

アプリ開発の要件定義書には、大きく分けて「業務要件」と「システム要件」を記載します。

業務要件

業務要件では、アプリの開発目的、コンセプトやジャンル、想定ターゲットユーザー(年齢層やその他ユーザー属性)、必要な機能一覧などをまとめます。要求定義の内容をさらにブラッシュアップし、具体的なユーザー属性を決定して記載する必要があります。必要な機能については優先順位が高いものを取り上げ、ログインの仕組みやメニュー表示、機能の呼び出し方法などの概要まで決定して記載できると、アプリのイメージがつかみやすくなり開発がスムーズに進みます。

システム要件

システム要件では、業務要件から洗い出した開発する機能、システム搭載にかかる時間、全体のスケジュールや進め方といった技術的な概要を記載します。業務要件で機能に優先順位を付けるのは、システム面で開発を行う際に実現できる機能とできない機能が出てくるためです。優先順位が明確であれば、開発者側が必要な作業と対応不可の作業を瞬時に把握してシステム要件に落とし込むことができます。

機能要件と非機能要件の違いを押さえる

システム要件は、さらに機能要件非機能要件に分けて考えると抜け漏れが減ります。機能要件は「何ができるか」、非機能要件は「どのくらいの品質・条件で動くか」を指します。

店舗アプリでいえば、クーポンを配信できる、会員証を表示できるといったものが機能要件です。一方、同時に何人が使っても落ちないか、起動に何秒かかるか、障害時にどれくらいで復旧するかといった条件が非機能要件にあたります。

この非機能要件は決め忘れが起きやすく、運用が始まってから問題になりがちです。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公開している「非機能要求グレード」では、非機能要求を可用性・性能/拡張性・運用/保守性・移行性・セキュリティ・システム環境/エコロジーの6大項目に整理しており、項目の洗い出しに活用できます(参考:非機能要求グレード|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)。

同資料は要求項目を段階的なレベルで示しているため、発注者と開発者が「速い」「安全」といった曖昧な言葉ではなく、具体的な水準ですり合わせられる点が利点です。すべての項目を埋める必要はなく、自社にとって重要な項目から順に決めていけば十分でしょう。

要件定義書に入れておきたい項目の一覧

書式に決まりはありませんが、一般的には次の項目を押さえておくと過不足のない要件定義書になります。

まず全体像として、開発の背景と目的、解決したい課題、対象ユーザー、システム化の範囲を記載します。ここが曖昧だと、以降のすべての判断基準が定まりません。

次に機能面として、機能一覧と優先順位、画面一覧と画面遷移、外部システムとの連携内容を記載します。あわせて、今回は対応しない範囲(スコープ外)も明記しておくと、後の認識ずれを防げます。

さらに非機能面として、対応OSと端末、想定ユーザー数、性能の目安、セキュリティ要件、運用・保守の体制を記載します。最後に、スケジュール、体制図、予算、検収の基準を加えれば、関係者が判断できる形になります。

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アプリ開発に要件定義が必要な理由

開発の目標や完成イメージを関係者間で共有できる

要件定義によってアプリで実現したいこと、課題の解決方法、成果のイメージなどが一覧でまとめられていれば、開発に関わるすべてのメンバーが具体的な目標と完成イメージを共有できます。上流工程を担当する業者がしっかり要件定義を行わなければ、下流工程(プログラミングなど)を担当する業者に情報が正しく伝わらず、開発が進まないリスクがあります。

要件定義があることで開発担当メンバーのモチベーションや方向性を維持・統一でき、結果として品質の高いアプリの完成につながります。

途中の仕様変更ややり直しによるコスト増加を防げる

開発途中でコンセプトと関係のない機能が追加されたり、無駄なデザインの描き直しが発生したりすると、開発スケジュールが遅延しコストが増加します。担当者ごとにスキルや考えが異なるため、方向性が定まっていないとずれが生じる可能性があります。

要件定義で方向性が可視化されていれば、こうしたトラブルを未然に防ぐことが可能です。トレンド変化などでどうしても機能追加が必要になった場合でも、要件定義があれば方向性を統一したまま一部機能の変更として対応できます。

修正にかかるコストは、工程が進むほど大きくなります。要件定義の段階なら文書を書き換えるだけで済みますが、実装後に同じ変更を行えば設計・実装・テストのすべてをやり直すことになります。時間をかけるべきなのは、むしろ手前の工程だということです。

発注者と開発業者のイメージを統一できる

アプリ開発を外注する場合は、発注者と開発業者のイメージ統一が不可欠です。ベースとなる書類がないと責任の所在が曖昧になり、トラブルになったり方向性がずれたりするリスクがあります。要件定義においてコンセプト、ベースデザイン、必須機能などが共有されていれば、最初からイメージを統一した状態で開発作業に進めるため、逐一方向性を確認する手間も省けます。

発注者として店舗アプリの開発を外部に委託する際は、要件定義に関するヒアリングや方向性の確認にしっかり参加して、イメージの齟齬を防ぎましょう。

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アプリ開発の要件定義書の作り方

打ち合わせ・ヒアリングで必要な情報を聞き出す

まず発注者と開発業者で打ち合わせ・ヒアリングを行います。開発業者が発注者に対して、現状の課題、アプリによってどう解決したいか、どうしても搭載したいデザインや機能など、要件定義の作成に必要な情報を細かく聞き出していきます。

事前にヒアリングされてもよいように要件をまとめておくと安心です。疑問や不明点があれば遠慮なく質問し、齟齬をなくしておきましょう。打ち合わせ前後で要求定義書を作成して共有しておくと、ヒアリングすべきポイントが明確になり、開発業者の要件定義作成がさらに効率化します。

発注者側が事前に整理しておきたいのは、現在の業務の流れと、そのどこに手間や機会損失が発生しているかという点です。「こんな機能が欲しい」から入るより、「この作業に毎日30分かかっている」と伝えるほうが、開発側から適切な提案を引き出せます。

ヒアリング内容を基に要件定義書を作成する

ヒアリング内容を基に、開発業者側が要件定義書を作成します。この際、理論上搭載可能か、予算的に実現できるか、導入が簡単かといった条件によって、搭載できる機能とできない機能がふるいにかけられます

発注者側の条件がすべて機能として搭載されるわけではない点に注意しましょう。事前に各機能の優先順位を決めて開発業者に共有しておけば、優先度の高い機能が確実に搭載され、100%に近い状態でアプリを開発・提供できるようになります。

システム設計とすり合わせて実現可能性を確認する

要件定義書の内容を実際のシステム設計とすり合わせていきます。要件定義書で優先順位の高い機能をすべて搭載するものとして取り上げても、実際の開発担当者にヒアリングした際に技術面やコスト面で実現が難しいと判断されるケースもあります。

こうしたずれを解消しながら、システム設計に要件定義書の内容を落とし込んでいくことが重要です。すり合わせ後に搭載できなかった機能があれば、そのままで問題ないかを開発業者と確認し、要件定義書の変更内容についても合意を取りましょう。

関係者の合意を取ってから次工程に進む

要件定義でとくに重要なのが、次の工程に進む前の合意形成です。IPAが公開している「超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条」でも、「ステークホルダ(利害関係者)間の合意を得ないまま、次工程に入らない」という原則が挙げられています(参考:超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条|IPA)。

同資料では、合意を得ないまま開発に入ると要件定義自体がひっくり返るおそれがあるとも指摘されています。実際、開発後半で経営層から新しい要望が出て手戻りが発生する、というのはよくある展開です。

対策として、要件定義書は現場担当者だけでなく、決裁権を持つ人にも目を通してもらいましょう。合意した日付と内容を記録し、変更が発生した場合は改訂履歴として残しておくと、後から経緯を追えるようになります。

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要件定義書を作成するときのポイント

取り入れたい機能に優先順位をつける

開発を実行する場合、取り入れたい機能には必ず優先順位をつけましょう。たとえば「EC機能を付けて売上を向上させる」のが最優先であれば、カート機能や在庫取り置きのデータ連携機能の優先度が高くなります。

目標を明確にした上で、その目標達成に対してどの機能が最優先で搭載されるべきかを順位付けすると、スムーズに開発が進みます。アプリプラットフォームを使う場合でも、ノーコードの制約上搭載できない機能が出てくるため、優先順位が付いていれば搭載を見送るべき機能が瞬時に判断できます。

優先順位は4段階に分けて整理する

優先順位を数字で並べようとすると、関係者ごとに「1位」が変わって収拾がつかなくなることがあります。そこで使いやすいのが、必須・推奨・任意・対象外の4段階に振り分ける方法です。

「必須」は、これがなければアプリを出す意味がない機能です。「推奨」は、あると効果が大きいが初回リリースに間に合わなくても運用できるもの。「任意」は余力があれば入れるもの、「対象外」は今回は作らないと明示するものにあたります。

この分類のよいところは、「対象外」を書面に残せる点です。何を作らないかを合意しておくと、開発途中で要望が戻ってきたときも判断がぶれません。

振り分けの基準は、最初に決めた目的です。目的への貢献度が高いものから必須に置いていけば、社内での議論も感覚論になりにくくなります。

誰が見ても理解できる内容にする

要件定義書は、エンジニアだけでなく経営陣など技術に詳しくない層も確認する書類です。全体の概要、システム構成、現状の作業内容、アプリ導入後の変化、利用するデータといった各項目を一覧でわかりやすく記載し、専門用語には注釈を付けて意味を解説するなど、誰が読んでも理解できるように工夫しましょう。

操作手順などが見る人によって解釈がずれないよう、具体的にどう操作するのかを細かく記載することも重要です。

曖昧さを減らすには、形容詞を数値に置き換えるのが有効です。「動作が速いこと」ではなく「起動から3秒以内にホーム画面が表示されること」と書けば、完成後の判断基準としても機能します。

テンプレートやワイヤーフレームを活用する

要件定義書を初めて作成する際は、様式のテンプレートを活用すると効率的です。必要な項目が一通りそろっているため、すぐに作成を開始でき、不要な項目の削除や必要な項目の追加も簡単に行えます。

またアプリの構造や画面遷移を図式でわかりやすく伝えるために、ワイヤーフレームを活用する方法も有効です。文章だけでなくイラストや図形を用いて画面デザインや動きを共有できるため、アプリ初心者でも直感的にどんなアプリになるかを理解しやすくなります。大まかなレイアウト・構造を事前にワイヤーフレームで共有しておくと、開発段階でのずれが出にくくなります。

ワイヤーフレームとあわせて画面遷移図も用意しておくと、行き止まりになる画面や、戻る手段のない画面を早い段階で発見できます。この2つは色やデザインを入れず、白黒の四角と文字だけで作るほうが議論が構成に集中しやすくなります。

要件定義でよくある失敗と対策

要件が固まらないまま開発に入ってしまう

納期が迫っているからと要件定義を短縮し、走りながら決めることにするケースです。結果として仕様変更が繰り返され、当初より工数も費用も膨らむという展開になりがちです。

対策は、初回リリースの範囲を小さく区切ることです。すべてを一度に作ろうとせず、必須機能だけで出して運用しながら追加していく方針にすれば、要件定義にかける時間も現実的な範囲に収まります。

非機能要件を決め忘れてリリース後に問題が出る

機能の話には時間をかけたのに、同時アクセス数やデータのバックアップ、障害時の連絡体制を決めていなかった、というのもよくある失敗です。これらは動き始めてから問題が表面化するため、対応コストも大きくなります。

先に挙げたIPAの6大項目を一覧として使い、自社に関係する項目だけでも埋めておきましょう。とくにセキュリティと運用・保守の2項目は、店舗アプリでも必ず確認しておきたい範囲です。

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リリース後の運用・保守を想定していない

要件定義がリリースまでの話で終わってしまい、公開後に誰が何を更新するのかが決まっていないケースも見受けられます。更新が止まったアプリは使われなくなるため、開発費が回収できません。

要件定義の段階で、コンテンツの更新担当、更新頻度、OSアップデートへの対応方法、問い合わせ窓口までを決めておきましょう。管理画面から自社で更新できる範囲がどこまでかも、あわせて確認しておくべき点です。

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店舗アプリの要件定義で押さえておきたい観点

目的と測る指標を先に決める

店舗アプリの場合、要件定義の前に決めておきたいのが「何を改善したいのか」です。再来店を増やしたいのか、レジの手間を減らしたいのかで、必須となる機能は変わります。

あわせて、成果を測る指標も決めておきましょう。アプリ会員数、月間の起動ユーザー数、クーポン利用率といった数値を先に置いておくと、リリース後の評価がぶれません。

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既存システムとの連携範囲を確認する

店舗アプリでは、POSレジや会員システムとの連携が要件を大きく左右します。購買データがアプリ側に反映されなければ、来店履歴に応じた配信は実現できません。

確認しておきたいのは、連携の方法・反映のタイミング・追加費用の3点です。標準機能では対応できず個別開発になる場合もあるため、要件定義の段階で見積もりに含めておきましょう。

開発方法によって要件定義の粒度は変わる

一から設計するスクラッチ開発では、画面単位・処理単位まで細かく定義する必要があります。一方、プラットフォーム型を使う場合は標準機能が決まっているため、要件定義は「用意されている機能のどれを使うか」を選ぶ作業が中心になります。

後者であれば期間も費用も抑えられますが、標準機能でできないことは実現できません。要件定義の初期段階で、どうしても譲れない機能が標準機能の範囲に収まるかを確認しておくと、後戻りを防げます。

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まとめ

本記事では、アプリ開発における要件定義の役割、要件定義書に記載すべき項目、作成の進め方、そして作成時のポイントを解説しました。要件定義はアプリのコンセプト・ジャンル・デザイン・機能の概要を一覧でまとめる作業であり、これを明確にすることで開発がスムーズに進みます。

要件定義書を作成する際は、機能の優先順位付けや関係者との内容すり合わせを忘れず行いましょう。

あらためて整理すると、要件定義で押さえるべきなのは「目的を1つに絞る」「作らない範囲も書き残す」「合意を取ってから次に進む」の3点です。この3つが揃っていれば、開発途中の手戻りは大きく減らせます。

あわせて、機能要件だけでなく非機能要件まで目を向けておきましょう。IPAが公開している資料は無償で利用できるため、項目の抜け漏れを確認する一覧として活用すると効率的です。

発注者として関わる場合も、要件定義を開発会社に任せきりにしないことが大切です。自社の課題と優先順位を言語化して持ち込むだけで、提案の精度も開発の進みやすさも変わってきます。

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