【DX】コロナ時代におけるデジタルトランスフォーメーション
一昔前は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は大企業が中心に行っているものでした。しかし現在ではコロナウイルス蔓延の影響もあり、中小企業でもデジタルトランスフォーメーションを積極的に進める流れが出てきています。
DXを成功させればコスト削減になるだけでなく、新しいビジネスモデルを創造しやすくなったりビジネスの柔軟性が上がったりとさまざまなメリットがあります。企業がコロナウイルスで混乱している今だからこそ、強力にDXを推し進めて将来起こる不測の事態にも対応できる体制を整えておきましょう。
今回はDXについて詳しく理解したい方向けに、DXとは何か、そして必要となっている背景や成功事例などをご紹介していきます。
DX:デジタルトランスフォーメーションとは?
DXとは現在企業が行うべき取組という狭義の範囲で語られていますが、本来将来訪れるであろう社会の変化について解説する概念でした。
最初の提唱者はスウェーデンのウメオ大学で教授をしている、「エリック・ストルターマン」氏です。 エリック・ストルターマン氏は「ITの浸透が、人々の生活をさまざまな面でよりよい方向に変化させる」と提唱を行いました。ITが普及して人間の暮らしを便利にすることで新しい社会が実現する、といったニュアンスで使われています。
しかしエリック・ストルターマン氏の定義は幅広いものであり、それゆえ企業や政府機関などが独自の解釈を用いてDXを再定義しているのもポイントです。
たとえば経済産業省では、DXを進めるための基本的な取組方法を記載した「DX 推進ガイドライン」を公開しています。DX推進ガイドラインの中では、DXを「企業がビジネスの激変に対応するために、データやデジタル技術を活用する。そして顧客や社会のニーズをベースに製品やサービス、ビジネスモデルを変革して企業文化や風土までも変革し、競争優位性を確立すること」と定義しています。
企業としてDXを実行する際は経済産業省の定義を参考にしたほうがよいでしょう。今後日本企業としてDXを推進していく際は、政府の取組方針なども頭に入れながら効率よくDXを進めていく必要があるからです。
市場などビジネス環境の変化で取り組み必須となっている「DX」
DXは次のような背景から、事業規模や業種にかかわらず取り組むべきものとなっています。
■スマホにより消費行動が変化し、OMOが求められている
インターネットとデジタルデバイスの普及は、私たちの消費行動を大きく変革してきました。たとえばパソコンが普及してからは、Webブラウザーを通してECサイトで商品を購入するといった行動も急増しています。
そしてスマホの普及により消費行動はさらに変化しています。
たとえば「外出中に付近の飲食店を調べ、口コミなどの評判がよいお店をその場で選んで直行する」といった消費スタイルも一般的になりました。どこにでも気軽に携帯しながら情報を調べられるスマホならではの利点が活かされています。場所や時間を選ばずに消費者とタッチポイントを持てるようになったのが、企業の大きな収穫です。
ただし企業がスマホをタッチポイントとしてビジネスを成功させるには、「OMO」が重要になってきています。
OMOによりオンライン・オフラインを問わずスムーズにサービスを提供できるようにならなければ、不便を感じた顧客が離脱する原因を作ってしまいます。
OMOを成功させるには、たとえば自店舗のアプリを使ったアプローチが効果的です。
自店舗のアプリを作って顧客へ提供すれば、
- デジタル会員証によりスムーズに会員証を提示できる
- 実店舗でデータを収集してオンラインのデータと統合する
- 店舗で気になった商品の詳細をスマホで確認
といったOMOにつながるさまざまな施策を実行できるようになるのがメリットです。現在ではアプリプラットフォームにより簡単・コスト安でアプリを制作できるようになり、中小規模の企業でもアプリを活用してOMOに関するマーケティングを行うようになってきています。
■デジタル化によるディスラプション頻度が増して柔軟性が必要になっている
昔よりビジネスは安泰ではなくなってきました。デジタル化によるディスラプション頻度が増しているからです。
デジタルディスラプションとは、「デジタルテクノロジーの進化により今までのビジネスモデルが立ち行かなくなり破壊されてしまうほどの変化が起こること」を指します。デジタルデータや技術の利活用により、以前より革新的なビジネスモデルを構築できるチャンスは増えました。中小企業でもアイデアやそれを実現できる技術があれば、大企業のビジネスモデルを脅かせるほど画期的なビジネスモデルを顧客へ提供できる可能性があります。
しかし裏を返せば、地元でそれなりに知名度のある中小企業でも振興のスタートアップ企業にビジネスモデルを破壊されて収益が悪化する危険があります。
デジタルディスラプションに対応するためには、デジタルデータや技術の利活用を当たり前にしてディスラプションに耐えうるような企業体制構築が必要です。DXの推進によってデジタルベースで組織が動けるようになれば、柔軟にビジネスモデルの変化へ対応可能になります。
■コロナ時代の事業継続計画(BCP)としてテレワークが必須に
コロナウイルスは急速に蔓延しました。最初は楽観視していた日本ですが2月末ごろから国内でも患者が増え始めて大騒ぎになり、現在では必死に対応を行っています。コロナに限らず、地震や台風といった災害によりオフィス勤務形式が通用しなくなるケースはたくさんあります。
企業としてはどんな状態になっても事業を継続して、商品やサービスの供給がストップしないよう「事業継続計画(BCP)」を策定して実行していく必要があるのがポイントです。
BCPの一環としてテレワークの推進は大きな効果があります。
- 自宅で業務をこなせる在宅勤務
- 外出先で仕事を行うモバイルワーク
- 社外の拠点で仕事ができるサテライトオフィス勤務
といったテレワークを社内で一般的にすれば、場所や時間に関係なく仕事を継続できる体制が整うからです。また「コロナウイルスが終息したら元のオフィス勤務に戻そう」と思っている企業も存在しているでしょうが、企業の競争力や成長性を確保するためにはテレワークを通してDXまで推進していける環境づくりが不可欠になります。
注意したいのが、「テレワークを実行していればDXになる」とはならない点です。テレワークはあくまで勤務形態を社外にまで拡大させただけであり、企業の風土改善などには焦点が当たっていません。テレワークの単なる実行がDXだと勘違いしていると、データやITを一部の範囲にだけ適用するにとどまってしまう危険性があります。
テレワーク実行を機に書類のペーパーレス化、システムによる社内データ統合管理などDXにつながる施策をいっしょに打てるようになるかがDX成功の可否を握っています。
■コスト削減・新ビジネスモデルの確立などにより収益向上にも効果がある
DXを企業が進めると、まず紙の書類を用意して仕事をする必要がなくなります。紙の書類だときれいに整理されていても、いちいち必要な書類を探し出して確認する作業が必要なので手間が掛かります。また
- 印刷代
- 紙代
- 保管スペース代
- 保管に伴う人件費
などのコストも発生し、企業の利益を多少なりとも圧迫するのもネックです。
DXにより紙の書類ではなくデジタルの書類ベースで仕事を進められるようになると、上記で説明したようなコストが発生しなくなります。しかも書類を探し出して確認、入力といった作業を行うときもパソコンやスマホなどデジタルデバイスだけで完結するので、業務が効率化されて働き方改革にも効果が出るのがメリットです。
さらにDXをビジネスモデルに積極的に取り入れると、社会に今までなかった新しいビジネスモデルを確立できる可能性があります。
- サブスクリプションサービスによりレンタル店でCD・DVDを借りる必要がなくなる
- カーシェアリングにより個人で車を購入して所有するスタイルが崩れつつある
といった例が代表的です。
企業としてはDXを必要なものとして上手く取り入れつつ、コスト削減や新ビジネスモデルの確立などにつなげられれば最終的に多くの利益を見込めるようになります。
■政府がデジタル庁新設などでよりDXに積極的な姿勢を見せている
政府はDXに関して「2025年の崖」という考えを提唱しています。
2025年の崖では日本が2025年までにDXを実行できないと、2025年以降に最大毎年12兆円の経済損失を被ると提唱しているのがポイントです。
政府は2025年の崖で日本の経済成長が止まらないよう、現在さまざまな対策を行っています。
たとえば2018年5月には、有識者を集めて「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を発足しています。そして2018年9月には早くもデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会が研究結果をまとめて、DXの課題に関するレポートとして世間に公表しました。
さらに2018年12月にDX推進ガイドラインを発表、企業の指針になるDX推進の取組手順などが公表されています。他にも
- DX推進指標を発表してDXの推進具合を企業が計測できるようにする
- IT導入補助金を提供開始
- デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会が発足される
といったように複数の取組を次々に進行させています。
2020年9月には菅内閣が発足されましたが、菅内閣では2021年9月に「デジタル庁」を発足する予定です。デジタル庁では菅総理大臣の愛称でもある「GaaS(Government as a Startup、ガースーと呼称)」をコンセプトに、政府機関の業務効率化にまで踏み込んだDXを推進していく予定になっています。
政府が協力にDXを後押ししていることからも、企業は社会の一員としてDXに取り組む必要があるといえるでしょう。
コロナ禍の対応ができたデジタルトランスフォーメーションの事例
ここからはDXによりコロナ禍でも対応がスムーズにできた企業をご紹介していきます。
トライグループ:無料動画授業で学ぶ環境を提供
人気アニメを活用したCM提供でもおなじみの「トライグループ」では、2015年から無料動画授業を提供開始しています。
コロナウイルスの影響により、教室へ直接通って学習を行うスタイルが崩れました。教室で無理に授業を行おうとするとクラスター感染のリスクも抱えることになるので危険です。また家庭教師の派遣による学習にも感染リスクが存在します。
無料動画授業によりオンライン上で教育コンテンツを提供できる体制をすでに整えていたトライは、いち早くコロナの影響へ対応できた企業と言えるでしょう。無料動画授業では
・生徒が教師へ質問できる
・行動データを基に学習コンテンツを提供する
・学習進度を一目で把握できる
といった機能が提供されており、オフラインの授業環境とそん色ない環境を提供しつつもデジタルデータや技術を利活用する仕組みが整っているのがポイントです。
三菱電機:FA・スマートファクトリー化を支援
「三菱電機」は企業のFA・スマートファクトリー化を支援しています。
「e-F@ctory」を提唱しながらFA機器やロボットなどを開発して、
- ITシステム
- エッジコンピューティング環境
- 生産現場
の3層でスマートファクトリーを実現できるように各社のサポートを行っているのがポイントです。
今後はDXをAI分野などさまざまな領域に取り入れて、人手不足といった製造業における課題を解決できるように一層尽力していく構えです。
メルカリ:スマホ完結でユーザーの支持獲得
メルカリは現在消費者間で取引ができる「CtoC」形式のフリマアプリとして、日本トップのシェアを誇っています。
メルカリの特徴は、スマホ1つで出品や購入が完了する点です。
専用アプリをインストールすれば、商品の撮影から詳細の入力、配送方法の指定など必要な情報をすべてスマホ上から設定可能です。また購入検討者とのやり取りもスマホだけでこなせるようになっています。
購入者側も、アプリからいつでも好きな商品をお気に入りしたりして購入手続きまで移行できます。支払いにはクレジットカードだけでなく自分が出品で稼いだお金や、メルカリ独自の後払い制度(メルぺいスマート払い)などを利用できるので便利です。
オークション形式と違って手軽にインターネット上でフリマ取引ができるメルカリは急速にシェアを伸ばしていきました。
ちなみに現在ではリアルのイベントも開催しており、OMO的な施策を実行しているのもポイントです。
大塚製薬:センサーで服薬忘れ防止データ収集
健康食品や製品の開発で有名な「大塚製薬」は、「NEC」と協力して脳梗塞治療薬の服薬忘れを防止できるシステムを開発しました。
指定の日時にLEDなどを駆使して服薬タイミングを患者に知らせて、服薬データを関係者に通知する仕組みを整えました。
ITの活用により確実に服薬忘れを防止できるシステムは画期的です。
今後はAIを活用しながら収集したデータを分析して、新たな商品やサービスなどの開発へ生かしていく予定です。AIを活用しながらデータの利活用を進めていく取組は政府が提唱している「ソサエティ5.0(最新ITがもたらす新しい社会)」でも事例として取り上げられており、医療分野で大塚製薬がさらなる業績を残せるかが注目されます。
まとめ
今回はDXの概要や必要な背景、そして成功事例などをご紹介してきました。
DX推進により、企業は強い競争力や柔軟性などを獲得できます。今後将来的に成長していくために必要不可欠な力は、DXの実現により手に入れていく必要があるので手をこまねかないようにしてください。
ぜひ成功事例も参考にしながらDXに関するデータを収集して、自社のDX実現にも役立ててみましょう。
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