店舗とECをつなげるオムニチャネルとは?
現在アパレルといった業界を中心として、オムニチャネルという考えが重要となってきています。オムニチャネルによって経路によらないスムーズな購買アクションを実現するのが、DXでデジタル改革をする際にも必要になってきています。
オムニチャネルを実現するには単に複数の経路で販売を行ったりするだけではいけません。在庫を共有したり、商品を自宅でも店舗でも受け取れるようにするなどいくつかの工夫が必要です。
今回はオムニチャネルの概要やメリット・デメリット、アプリを使った実現方法などを解説していきます。
オムニチャネルとは?
オムニチャネルとは「店舗側が顧客と作るあらゆる接点において、データを共有しながらスムーズな対応を行うための一連の手法」を指しています。
今ではオフラインだけでなく、オンラインにも販売経路が広がっています。この変化は店舗の売上額増加や新規顧客獲得などよい影響を与えましたが、同時に課題も増えました。
特に経路がオフライン・オンラインで分割されたまま、連携できないでスタッフの負担が増える、あるいは顧客損失の機会が増えてしまうといった事態が起きていました。たとえば在庫確認の際にオフラインとオンラインでデータベースが別々だと、それぞれを突き合わせて実際にはどのくらい在庫が残っているのか、何が不足しているのかが分かりにくくなります。またポイントが店舗でしか使えない場合、オンラインで買い物したい層にとっては店舗で貯めたポイントが使えず、そのまま失効してしまうリスクを追う可能性があります。
このように経路が連携されていないと業務工程が非効率化したり、購買における利便性が低下したりします。こういったリスクをなくして効率のよい業務や購買を実現するために、オムニチャネルという考えが存在しているのがポイントです。
オムニチャネルとDXの関係性とは
オムニチャネルでは各経路の集約化や経路によらないシームレスな購買などを実現していくのがポイントです。その際欠かせないのがデータです。
在庫情報にしてもポイント情報にしても、すべては在庫管理やポイント管理といった各データシステムが役割を担っています。オムニチャネルでは今まで縦割り式で連携できていなかった部分をシームレスに集約して1つのデータとして使えるように調整するのがポイントです。この工程によって単にチャネルが効率化してどの経路でも顧客が買い物しやすくなるといった利点が得られるだけでなく、データ活用において効率性が上がり分析効率が向上するといった効果も得られます。
結果的にデジタル改革で必要なデータの連携や集約・利活用を、オムニチャネルによって達成できるのがポイントです。
もし実店舗においてどこからデジタル改革をしていけばよいのか分からない方は、ぜひオムニチャネルが実現できているかを考えて、実現達成度が低い場合は販売経路や在庫管理システムなどから改革を行うとよいでしょう。
店舗がオムニチャネルを導入するメリット・デメリット
店舗がオムニチャネルを導入すると、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット1:サービス利用の利便性が向上し、顧客の機会損失が減少
オムニチャネルを実現すると、サービス利用において顧客の利便性は一気に向上します。
たとえばある顧客が今まで送料を払いたくないといった問題で自店舗のECサイトに手を付けていないとします。この際送料を0円にするのは簡単ではありませんが、「最寄りの店舗受け取りに限り無料にする」という手法を、オムニチャネルでは実現可能です。そうすれば付近に店舗がある場合、顧客はECサイトでゆっくり買い物した後に安心して店舗で商品を受け取れます。この際あくまでECサイトで買い物をしたのと同じ状態になるので、ECサイト限定のクーポンまで利用しながら安く買い物ができるのもポイントです。
このように「実店舗に来店したのに、すでにECでクーポンを使って買い物を済ませて後は受け取りを済ませるだけ」というような状況は利便性においてよい評価を顧客へ与えてくれます。
最終的には課題を感じて店舗を利用していなかった顧客の機会損失が減少して、自店舗のリピーター増加や売上成長なども達成しやすくなるでしょう。
メリット2:データを収集できる機会が増え、細かな顧客分析が可能
オムニチャネルを実現すると、デジタル機器を介してオンラインでもオフラインでもデータを収集できます。
たとえば店頭の商品に対してタグが付けられており、そのタグを通してスマートフォンから商品詳細を調査できるようにしている店舗があります。顧客側では手持ちのスマートフォンで商品の詳細などを手軽に調べられますが、この際店舗側にもどの商品がスキャンされたのかデータが残るのがポイントです。蓄積されたデータは店舗の商品人気などを計測する際に参考になるでしょう。
またECといったオンラインの場所でも、当然データを蓄積可能です。蓄積したデータを集約して連携分析することで、顧客の細かい行動パターンやオンラインからオフラインに行く際どのように購買をするのかなども分かりやすくなるでしょう。
こうした細かな顧客分析は、今まで実現できなかった施策の立案・実行にも影響を与えます。
デメリット1:自社の持つチャネル間で連携が必要
オムニチャネルを実現しようとしても、それが売上増加などにつながらないケースもあります。
たとえばECサイトの利便性が高過ぎる状態で、あまり利便性やお得さを感じられない状態の実店舗と連携を行い、オムニチャネルを果たしたとします。この場合「実店舗に行かなくてもECサイトで買い物を済ませればよいのではないか」と思う顧客が増加して、実店舗の売上が結局減少してしまうリスクがあります。
オムニチャネルを実現しても、片方にしか顧客が集中しない状況ができると集約を行った意味がありません。
基本的には「実店舗でもECサイトでも買い物する機会を両方増やしたい」と思ってくれるような層を増やして購入額を増加させることが目標になってくるでしょう。先ほどのように実店舗でEC受け取りができるようにしながら、ECサイトで実店舗限定のクーポンを配布したりといくつかの工夫をしながらどちらのチャネルも利用回数や利用額が増えるように調整していきましょう。
デメリット2:即効性を発揮する施策ではない
オムニチャネルに即効性はありません。基本的に少しずつPDCAを回しながら改善を行い、企業に対する顧客ロイヤリティを向上させて利益を増やしていく手法だからです。
しかも効果が出る前に、スキルのある担当者を用意して予算を確保し、システム改修やデータ集約・整理といった作業をする必要があります。当然歴史のある企業でデータ蓄積量が多いと、それだけオムニチャネルへの変更にかかわる時間コストも増えていくでしょう。
そのためオムニチャネルを実現するためには必要な作業を事前に洗い出して必要な人員数や予算を割り出した後、上層部にプロジェクトを持っていき承認を得る必要があります。予算が少なかったりすると実現できないリスクもあるため、時間を掛けて余裕を持ち実行していきましょう。
ちなみにDX化の達成期限の基準となっていた2025年の壁がもう少しでやってきてしまうため、オムニチャネルを実現したいと思っていてもまだ実現していない場合は今のうちに準備をしたほうがよいです。
オムニチャネル導入の流れ
続いてはオムニチャネルを導入する流れを解説していきます。
自社の環境分析とカスタマージャーニー作成
まず自社の経路に関する環境分析を行います。
分析の際は自社が持っている販売チャネルの数や内容を確認して、どのようなオムニチャネル実現のための統合システムが存在しているのかを確認します。
そして競合がどのようなオムニチャネル施策を用いて成功しているのかも余裕があれば調査してみてください。
次に消費者行動を細かく把握していきます。把握にはカスタマージャーニーマップを使ってみてください。
店舗の認知きっかけや購入の判断材料、購入後の自社メディアへのアクセスなどを購買フェーズに合わせて理解することで、オムニチャネルにおいてどのタッチポイントを重要視すればよいかなどが明確になっていきます。
社内での部署を超えた意識共有
次に社内での部署を超えた意識共有が必要です。オンラインとオフラインをまたいで統合するシステムを導入して利用していくので、部署にかかわらずデータを連携して活用できるようにチームアップをしないといけません。
- オムニチャネルで業務工程がどう変わるのか
- 部署ごとに利益配分がどう変更されるのか
など、確認重要度の高い部分は事前に決めておき共有すると課題が減るでしょう。
またオムニチャネルによって統合システムだけでなくECや各種システムの新調が1から必要になった際は、担当者を決めて導入・設置の準備まで行う必要があるので注意しましょう。
社内チャネル間でのデータ連携
次に最重要である、社内チャネルにある全データを連携させて集約させる作業に移ります。
- 実店舗の売上
- ECサイトの売上
- ECを含めた各店舗の在庫状況
- 顧客の購買履歴
などすべての情報を統合して引き出せるように調整する必要があります。データベース連携においてエラーがあると、システム全体が動かなくなる危険もあるので気を付けて作業をする必要があるでしょう。統合に関して新しいシステムを導入して使う場合は、スムーズに操作できるようにトレーニングをしておいてもよいかもしれません。
データ連携にはアプリがおすすめ
スマートフォン利用者が多い現代で、ECサイトと実店舗とのオムニチャネル化において相性がよいのはアプリです。
アプリであればデータ連携・統合後に、プッシュ通知やニュース配信といったさまざまな機能を利用できます。そして店舗側からデータを活用して効率的にユーザーを各行動へ誘導可能です。また購入履歴等の情報から顧客の好みや傾向を判断して、適切なタイミングで適切な商品をおすすめしたりと1人1人に合わせたマーケティングが簡単に実現可能になっています。
ぜひオムニチャネルを有効活用する手段として、アプリシステムを検討してみてください。
カスタマージャーニーの効果検証
オムニチャネル達成後は、目標通りの効果が出ているか確認してみてください。
これにはシステムの稼働状況やエラーのチェックだけでなく、カスタマージャーニーとの照合も含まれます。
もしカスタマージャーニーで予測されていない行動が新規で発生していたり、予測よりステップが1つ少ないといった問題が発生した際は、こちらが想定したような動きになるように調整する必要があるでしょう。あるいは顧客の実際の動きに合わせてシステム等を修正するかを選択することになります。
オムニチャネルのスマホアプリ戦略
次にオムニチャネル×スマホアプリ戦略について解説していきます。
全チャネルでの顧客行動をデータ化してマーケティングに活用
ECサイトや実店舗など、販売チャネルにこだわらず利用者データを統合できるのはオムニチャネルのメリットです。
どのチャネルのデータも適切な形で蓄積されて確認できるので、ユーザーの消費活動を細かく確認しながら販売計画を立案できます。
たとえばECサイトで一定以上の購入額のある人が、実店舗ではどれくらい来店して買い物をしているのかを計測して、実店舗への来店数も増やせるようにECサイトでアクションを取るといったことも簡単です。
膨大なデータを蓄積することで客観的な売上見込みを立てる
オムニチャネルで活用したアプリは、売上見込みを立てる際にも最適です。
売上見込みはターゲットの、
- 年代
- 性別
- ライフスタイル
などさまざまな要素から算出されてグラフ化されます。
そしてアプリでは客観的な顧客の行動履歴を大量に蓄積して活用可能です。膨大なサンプルデータを基に統計・グラフ化を行うので、完成した売上見込みはより正確となりマーケティング戦略に生かせるでしょう。
オムニチャネルに合うスマホアプリの特徴
ここからは、オムニチャネルと相性のよいスマホアプリを作るコツをご紹介していきます。
CRM機能はマスト
小売店の多くがCRMで顧客管理を行っています。CRMがないとオムニチャネルを実現してもデータの利活用がはかどりません。
よってCRM機能で顧客の現状収集や管理が可能であり、利用者の囲い込み施策などを立案する際に重要となるCRM機能はアプリに必須です。
アプリプラットフォームを導入する際は単にCRM機能が搭載されているかだけでなく、どこまで確認や分析ができるかをチェックしてみてください。
クーポンやプッシュ通知を狙った層にターゲティング配信できる
アプリを使用すれば簡単にクーポン配信したり、プッシュ通知でコンテンツの更新情報などを通知して誘導することが簡単にできます。
この際はセグメント化作業をしてターゲット層へコンテンツを最適化して提供する必要がありますが、すでに多くのアプリプラットフォームではターゲット設定をしてクーポン配信やプッシュ通知の設定をできる機能が搭載されています。この機能を使えば興味がある層だけに的確な情報を配信できるので、ターゲティング戦略を立てて顧客との接点を強化・自店のリピート率を高められるでしょう。
行動履歴データを取得できる
これまでのチャネル管理では、顧客の行動パターンを隅々まで把握するには限界がありました。しかしオムニチャネル化したアプリを使えば、クーポンの実店舗での使用履歴を追うなどの方法で顧客の行動履歴を逐一取得できます。
どのようなタイプの顧客がいつどこで何の商品を購入したのかを把握することで、店舗やサイト経営、マーケティング戦略の立案に役立つでしょう。
まとめ
今回はオムニチャネルの概要やメリット・デメリット、アプリを使った実現方法などを解説してきました。
オムニチャネルを実現するには単純にデータを集約させるだけでなく、利活用させる方法も用意しておく必要があります。チャネルにかかわらずデータを蓄積して分析ができるアプリをオムニチャネルの中心に据えてみるのもおすすめです。
オムニチャネル実現の際は、ぜひCRMやクーポン配信、プッシュ通知などが備わっている店舗アプリDX版 raitenの活用をご検討ください。