CX戦略とは?アプリを活用した顧客体験向上の方法とトレンド事例を解説|策定手順とCSとの違い

業種全般
公開日:2019.05.31 更新日:2026.08.17
最強のCX戦略!オリジナルアプリは顧客体験に最も効果的だった。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは顧客体験を意味し、商品やサービスを通じて顧客が得る総合的な体験価値を指す概念です。近年はCX戦略に取り組む企業が増えており、特にスマートフォンアプリを活用した顧客体験の向上が注目されています。

本記事ではCX戦略の基本的な考え方から、優れた顧客体験に必要な要素、海外のトレンド事例、そしてアプリがCX戦略に効果的な理由までをわかりやすく解説します。

あわせて、CSやUXとの違い、CX戦略を立てる5つの段階、成果を測る指標、進めるうえでつまずきやすい点まで補足しました。用語の理解だけで止まらず、自社で何から着手するかを判断する材料としてご覧ください。

CX(顧客体験)とは

商品やサービスを通じた総合的な顧客体験のこと

CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)とは、商品やサービスを通じて顧客が得る総合的な体験価値のことです。商品を欲しいと感じる瞬間から、情報を調べる、実際に購入する、購入後に利用する、問い合わせをするといった一連のプロセスのすべてが顧客体験に含まれます

企業は顧客と「販売・提供するとき」だけ接点を持つと考えがちですが、実際にはユーザーが広告を見た瞬間、商品をネットや店頭で調べる場面、購入後に不明点があった場面など、さまざまなタッチポイントでつながりを持っています。

これらのタイミングで1つでも不満が生じると、その商品やサービスの満足度が低下しリピート率にも影響します。商品を販売するだけでなく、購入前後を含めた顧客体験を総合的に向上させることがCX戦略の本質です。

従来の施策とCX戦略の違い

マーケティングの世界には「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という有名な格言があります。従来のマーケティングではドリル(商品)の魅力を伝えることに注力していましたが、顧客が本当に求めているのは「穴を開ける」という目的の達成です。CX戦略ではこの考え方をさらに発展させ、顧客の目的や課題を理解したうえでそれに合った体験を提供することを目指します。

現在はさまざまな情報が溢れているため、購入を検討している顧客自身が本来の目的を見失っているケースも少なくありません。企業側が顧客の目的を見つけ出し、サービスに工夫を加えることもCX戦略の重要な要素です。顧客体験の全体像を把握することで、的確なサービス改善につなげられます。

関連記事:顧客体験(CX)向上にアプリが効果的な理由|改善ポイントを解説

関連記事:店舗アプリの導入効果とは?メリット・デメリットと成功事例を解説

CSやUXとの違いを整理する

CXは、CS(顧客満足度)やUX(ユーザー体験)と混同されやすい言葉です。違いは対象範囲と、測っている時点にあります。

  • CX:認知から購入後のサポートまで、企業との関わり全体で受け取る価値
  • CS:ある時点での満足度。CXの状態を測る指標のひとつ
  • UX:Webサイトやアプリなど、特定の製品・画面を使うときの体験

つまりUXはCXの一部であり、CSはCXを測るための物差しという関係です。「アプリの使い勝手(UX)は良くなったのに再来店が増えない」という状況は、UXだけを改善してCX全体を見ていないときに起こります。

逆に、店頭の接客が丁寧でも、予約が電話しかできず問い合わせの返信が遅ければ、体験としては途切れてしまいます。点ではなく線で見る視点が、CX戦略の出発点になるでしょう。

CX戦略が注目されるようになった背景

背景にあるのは、顧客との接点が増え、機能や価格での差別化が難しくなったことです。検索、SNS、口コミ、アプリ、実店舗と経路が分散したぶん、どこか一箇所の体験が悪いだけで全体の印象が決まってしまいます。

取引そのもののデジタル化も進みました。経済産業省の調査では、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円、物販分野のEC化率は9.8%と、いずれも前年から拡大しています。オンラインで比較・購入することが前提になり、実店舗もその流れに合わせた体験設計を求められるようになりました。

参考:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」

さらに体験の良し悪しは口コミとして残り、次の顧客の判断材料になります。広告費で認知を広げても、体験が伴わなければ評価は積み上がりません。

優れた顧客体験に必要な「コンテンツ」と「データ」

コンテンツの使いやすさが顧客体験の基盤になる

コンテンツとは、サービスの充実度や利用するためのツール・環境の使いやすさを指します。使いたくなる気持ちを引き出す軽快な動作や見やすいデザイン、手軽なアクセス方法、継続してチェックしたくなる更新頻度、自分に合った情報の取得といった要素が押さえられているかどうかが、満足のいく顧客体験につながります。

たとえばスマートフォンから簡単にアクセスでき、画面サイズやタップ操作に最適化されたレイアウトを持つ商品ページを用意することがCX戦略の基本的な工夫です。どれだけ魅力的な商品を扱っていても、ユーザーの使い勝手を考えていないサービスでは顧客を引きつけることができません。不便さを取り除き、使いたくなるコンテンツを整備することがCX向上の第一歩です。

データの収集と活用で顧客体験を最適化する

一度のサービス配信や定型化された内容を提供し続けるだけでは、いずれ顧客に飽きられてしまう可能性があります。ユーザーの最新データを取得してコンテンツの中身を更新し続けることで、そのときの最適な形で顧客体験を提供できるようになります。

顧客にきちんとメリットを届けられるコンテンツの充実と、データのスムーズな取得を同時に叶えるには、スマートフォンアプリが効果的です。アプリであれば顧客の行動データを自動的に蓄積しながら、その分析結果をもとにコンテンツを最適化するサイクルを回すことができます。

関連記事:顧客育成にアプリが効く理由|「入れたくない」を防ぐ導入のコツ

関連記事:カスタマーサクセス戦略とは?アプリで顧客満足度とLTVを高める方法

カスタマージャーニーマップで体験を線にする

コンテンツとデータを整える前に必要なのが、顧客がどの順番で自社と関わっているかを1枚に並べる作業です。認知、下調べ、来店・購入、利用、問い合わせ、再来店という流れに沿って、行動・感情・接点を書き出します。

これがカスタマージャーニーマップですが、目的はきれいな図を作ることではありません。重要なのは、感情が落ち込む箇所を特定することです。「待ち時間が長い」「情報が見つからない」「問い合わせの返事が来ない」といった落ち込みが見えれば、優先して手を入れる場所が決まります。

材料は身近なところにあります。アンケートの自由記述、問い合わせ履歴、口コミサイトの評価、そして現場スタッフが「よく言われること」として把握している内容です。想像で作らず、実際の声から組み立てましょう。

顧客像が複数ある場合は、来店目的や頻度が異なる2〜3のペルソナに絞ると運用が回りやすくなります。数を増やしすぎると、どの体験を優先するのか判断できなくなります。

データは集めるだけでは体験が変わらない

データ活用でよくある行き詰まりが、収集した段階で満足してしまうことです。来店履歴や購買データが貯まっていても、それをどの判断に使うかが決まっていなければ、体験は何も変わりません。

先に「この数字が動いたら、この施策を打つ」という対応を決めておくと、分析が目的化しにくくなります。たとえば最終来店から一定期間が過ぎた顧客を抽出して案内を送る、上位の顧客だけに先行案内を届ける、といった形です。

あわせて、顧客情報を扱う以上は取得目的の明示や管理ルールの整備も欠かせません。安心して使える状態が保たれていること自体も、体験の一部として評価されます。

関連記事:顧客管理アプリ(CRM)おすすめ11選|機能・料金・選び方を徹底比較

CX戦略の立て方と顧客体験を最適化する手順

CX戦略は、次の5つの段階で組み立てると進めやすくなります。特別なツールがなくても、既存のデータと現場の声から始められるのが特徴です。

  • 現状把握:顧客との接点をすべて洗い出す
  • 整理:ペルソナとカスタマージャーニーをまとめる
  • 設計:目指す体験と、測る指標を決める
  • 実行:影響の大きい接点から順に手を入れる
  • 検証:指標の変化を確認し、設計を見直す

順番を守る意味は、施策の一貫性を保つためです。「問い合わせの返信を早くする」「クーポンを増やす」といった打ち手はあくまで施策であり、戦略ではありません。全体像が決まっていないと、部門ごとに良い施策を重ねても顧客側から見た体験は分断されてしまいます。

実行段階では、同時に多数の施策を走らせないことも大切です。1つずつ手を入れて指標の変化を見るほうが、何が効いたのかを判断できます。

CXを測る指標(NPS・CSAT・CES・LTV)

CXは感覚で語られやすいため、数値で追える指標を決めておきます。代表的なものは次の4つです。

  • NPS:人に薦めたい気持ちの度合い。関係性の強さを測る
  • CSAT:特定の接点における満足度
  • CES:手続きや問い合わせにかかる手間の少なさ
  • LTV・リピート率:体験の質が売上に反映されているか

NPSは、薦めたい度合いを0〜10で答えてもらい、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて算出します。回答者100人のうち推奨者が40人、批判者が25人ならNPSは+15です。

数値そのものよりも、自社の推移と自由記述の中身に価値があります。「なぜその点数を付けたのか」を1問添えるだけで、どの接点が評価を下げているのかが具体的に見えてきます。

指標は増やしすぎると運用が続きません。全体を見る指標と、改善対象の接点を見る指標を1つずつから始めるのが現実的でしょう。

CX戦略における4つのトレンド事例

ナイキ「House of Innovation 000」

スポーツブランドのナイキは、オンラインとリアル店舗を融合させた「House of Innovation 000」を開店しました。専用アプリから購入や予約を行うと、店舗内のロッカーから簡単に商品を受け取ることができます。

店内の商品にはQRコードが設置されており、スマートフォンで読み取ることで店員を介さずに試着やサイズ変更のリクエストが可能です。アプリを通じて顧客が能動的に商品を選べる環境は、アパレル業界で課題とされていた店員との距離感の問題を解消するCX戦略として注目されました。

アマゾンの即日配送サービス

アマゾンは専用アプリを通じて食料品や家庭用品を数タップで注文でき、即日配送を実現するサービスを展開しています。配送スピードをいくら向上させても、注文する側が使いにくければ意味がありません。

スマートフォンから簡単にアクセスでき、配送状況をいつでも確認できるアプリの存在が、CX戦略において不可欠な要素になっていることがわかる事例です。

メイシーズの画像認識による買い物サポート

アメリカの大手百貨店メイシーズは、ユーザーが撮影した画像をもとに取り扱い商品の中から似ている商品を提案する画像認識アプリをリリースしました。雑誌やテレビで見かけた洋服を撮影してアプリで検索すれば、類似商品と在庫のある店舗が表示されます。スマートフォンからそのまま購入も可能で、顧客の直感を大切にした買い物体験を実現しています。

Uberによるタクシー体験の進化

配車アプリを開発したUberは、従来のタクシー利用で面倒とされていた「空車を探す」「行き先を伝える」「料金を精算する」といった課題をアプリで一気に解決しました。サービスの利用前から利用後まで一貫してカバーする仕組みは、まさにCX戦略の好例です。アプリによってデジタルとリアルの融合を果たした事例として、多くの業界で参考にされています。

関連記事:One to Oneマーケティングとは?手法やメリット・事例を解説

4つの事例に共通する3つの型

規模の大きい事例ですが、やっていることは3つの型に整理できます。自店の規模でも応用できる考え方です。

  • 手間を消す:探す・伝える・待つ・精算するといった負担を減らす
  • オンラインと店舗をつなぐ:事前にアプリで済ませ、店舗で受け取る
  • 選ぶことを助ける:履歴や画像から、その人に合う候補を提示する

たとえば個人店であっても、アプリから予約と事前決済ができれば「手間を消す」に当てはまります。在庫や混雑状況を事前に確認できるようにすれば、オンラインと店舗をつなぐ施策になります。

この境目を意識させない設計はO2OやOMOと呼ばれ、CX戦略の実装としては効果が見えやすい領域です。大掛かりな投資よりも、来店前後の面倒をひとつ取り除くほうが、体験の改善としては伝わりやすいでしょう。

関連記事:アプリで実現するO2Oマーケティング!オンラインと店舗をつなぐ戦略

関連記事:商業施設マーケティングの革新!アプリを使った情報発信の秘訣

アプリがCX戦略に効果的な理由

スマートフォンは顧客との最も身近なタッチポイント

スマートフォンの普及率は年々上昇を続けており、ほとんどの世代で日常的に利用されるデバイスとなっています。調査によればスマートフォンにおける利用時間の大部分がアプリに費やされており、Webブラウザの利用時間を大きく上回っているというデータもあります。このことから、アプリを通じて顧客とつながることがCX戦略において非常に効果的であることがわかります。

普及の度合いは公的な統計にも表れています。総務省の通信利用動向調査では、スマートフォンの世帯保有率は9割を超え、テレビやパソコンを上回る水準に達しました。年齢層を問わず日常的に使われる端末になったことで、店舗と顧客をつなぐ経路としてアプリが現実的な選択肢になっています。

参考:総務省「通信利用動向調査」

アプリはコンテンツとデータの両方を同時に強化できる

アプリは使いやすいコンテンツの提供と顧客データの収集を同時に実現できるツールです。プッシュ通知で最適なタイミングに情報を届けたり、購買履歴をもとにパーソナライズされたおすすめ商品を表示したりと、コンテンツとデータの両面からCXを向上させることができます。

企業と顧客の距離を近づけ、接点を増やすという点で、スマートフォンアプリはCX戦略の中核を担うツールだと言えるでしょう。

関連記事:飲食・小売のCRM活用術とメリット|顧客管理アプリで売上アップ!

アプリでできるCX施策の具体例

実際にアプリ上で打てる施策は、次のように整理できます。

  • 会員証・ポイント・クーポン・予約を1か所に集約し、探す手間を減らす
  • 最終来店からの日数を条件に、復帰のきっかけとなる案内を届ける
  • 会員ランクに応じて、先行案内や限定体験など金額以外の特典を用意する
  • 来店直後にアンケートを表示し、その場で評価と理由を集める
  • 在庫や混雑状況を事前に確認できるようにする

ポイントは、全員に同じものを届けるのが最適化ではないという点です。その人にとって意味のある情報を、必要なタイミングで届けられるかどうかで反応は変わります。

一方で通知が多すぎると体験そのものを損ね、削除につながります。開封率と削除率を並べて確認し、層ごとに頻度を調整していきましょう。

関連記事:プッシュ通知のパーソナライズ成功法則!売上を上げる5つの鉄則

関連記事:LTV最大化は自社アプリ導入が決定打。現代だからこそ生きるアプリ活用法とは

インストールと継続利用までを設計する

アプリを使ったCX戦略でつまずきやすいのが、そもそも入れてもらえない、入れても開かれないという段階です。ここを設計しないまま機能を増やしても、体験は届きません。

インストールは、レジや受付でその場で完了できる導線を用意するのが基本です。「入れておくと次回から何が楽になるのか」をスタッフが一言で説明できる状態にしておくと、登録率は変わってきます。

継続利用のほうは、開く理由が定期的にあるかどうかで決まります。ポイントの残高確認、限定情報、次の特典までの進捗といった要素が、日常のなかで開く動機になります。

関連記事:店舗アプリの主要機能と導入事例|集客・売上アップにつながる活用術を解説

関連記事:集客アプリとは?店舗の来店数を増やす機能や活用のコツを解説

CX戦略を進めるときに注意したいこと

取り組みが止まってしまう原因は、おおむね次のいずれかに当てはまります。

  • 施策から始めてしまい、体験の全体像がない
  • 指標を増やしすぎて、運用が続かない
  • 値引きに偏り、価格でしか選ばれなくなる
  • データを集めるだけで、改善に接続していない
  • 部門ごとに施策が閉じ、接点のつなぎ目で不満が出る

なかでも影響が大きいのは、値引きへの偏りです。短期の来店数は動きますが体験の質は変わらないため、割引をやめた瞬間に元へ戻ります。上位の顧客ほど、金額以外の価値で報いる設計にしたいところです。

部門間の分断も見落とされがちです。店舗・販促・問い合わせ対応が同じジャーニーマップを見て、それぞれの担当箇所を把握している状態をつくると、つなぎ目で起こる不満が減っていきます。

関連記事:ファンベースマーケティングとは?意味やリピーターとの違い・施策と成功のコツを解説

まとめ

本記事では、CX(顧客体験)戦略の基本的な考え方から、優れた顧客体験に必要なコンテンツとデータの要素、海外のトレンド事例、そしてアプリがCX戦略に効果的な理由を解説しました。CX戦略は商品やサービスの販売だけに注力するのではなく、購入前後を含めた顧客体験の全体を向上させることがポイントです。スマートフォンアプリはコンテンツとデータの両方を同時に強化できるため、CX戦略の中核となるツールです。

進め方としては、まず接点を書き出して体験を線でつなぎ、感情が落ち込む箇所をひとつ直すところから始めるのが現実的です。指標はNPSとリピート率のように2つ程度に絞り、施策の前後で推移を確認するだけでも、判断の精度は上がります。

難しいのは、体験を測るデータと、体験を届ける手段が別々になっている点でしょう。アプリはその両方を1つにまとめられるため、店舗の規模を問わず取り組みやすい選択肢になっています。

弊社ではスマートフォンアプリの開発からサポートまで対応しています。CX戦略にアプリを活用したいとお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。

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